玲は痛みに耐えながら、無理に微笑みを作り、ぐっと腕を持ち上げて秀一の頬に触れた。「それに……秀一さんは、当時のことが今でもトラウマでしょ?もうこれ以上、あなたの傷を抉るようなこと……起こしたくないんです」秀一の痛みが、玲にはよくわかっている。だからこそ、秀一が自分を守ってくれるなら――自分も秀一を守りたい。ふたりの間に、ふっと静寂が落ちた。抱き上げたまま歩いていた秀一の足が、突然ぴたりと止まる。まるでその場で石になったかのように固まり、玲をじっと見つめる。玲が再び、苦しげに小さく声を漏らすまで。「しゅ、秀一さん……ちょっと……痛い、抱き方が……きつくなってる……」見た目は硬直しているだけだが、玲にはわかる。腰に回された腕も、肩を支える手も、じわじわと締めつけていた。「……悪い。わざとじゃないんだ」秀一は弾かれたように我に返り、慌てて力を緩めながら謝った。いつも冷静な男が、今はまるで叱られた子どもみたいだ。玲は薄く笑って、その様子を理解していた。「わかってますよ。さっきの私の言葉が嬉しくて……もっと抱きしめたくなっただけでしょ?」「……ああ。玲の言う通りだ。一秒ごとに、もっと……君が好きになっていく」秀一の目は赤く滲み、玲の唇にそっと触れては、名残惜しげに重ねる。そしてようやく、彼がずっと聞けずにいた質問を口にした。「玲……どうして電話に出なかった?何度も……何度もかけたんだ」「……え?そうですか……?うぅ……気づきませんでした」玲が答えようとすると、秀一の口づけが次を塞ぐ。何度も何度も、まともに言葉を繋がせてくれない。「……で、でも……私のスマホ……電池切れて……これも秀一さんのせいですけど」秀一の動きが、ぴたりと止まる。最近の秀一は、まるで欲張りの獣のように、玲を求めてやまなかった。朝も夜も、彼に翻弄され続け――そのせいで玲はスマホの充電すら忘れていた。今日佳苗に遭遇したとき、残った1%の電池で雨音に電話したきり、電源が落ちてしまった。そのあと秀一から鬼のように着信が来ていたことなど、知るはずもなく。その事情を聞いた秀一は、玲の唇の端をそっとなぞり、胸の奥にあった重い石をようやく下ろす。その指先もさらに優しくなっていく。そのとき、連絡を受けた医者が慌ただしく駆け込んできた。「玲
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