瑛の手が、ゆっくりと湊の頬に触れた。指先が肌に乗る瞬間、湊の背筋に淡い電流が走る。手のひらの温もりは、想像していたよりもずっと柔らかくて、それでいて逃がさない確かな力を持っていた。湊は息を詰めたまま、その手から伝わる体温を感じ取る。頬を包まれるだけなのに、胸の奥の張り詰めた糸が少しずつ緩み始めていく。瑛の瞳がすぐ近くにあって、その奥には迷いよりも強い何かが灯っていた。「…湊」名を呼ばれた声は低く、かすかに掠れている。その響きが耳から入り、心臓に直撃したように感じる。唇がわずかに動く気配と、間近に漂う呼気の温かさが、これから訪れる瞬間を予感させた。瑛の顔が、さらに近づく。視界の中で彼以外の全てがぼやけていく。湊は目を閉じるべきか、開いたままでいるべきかを迷ったが、その判断を下す前に唇が触れ合った。ほんの一瞬の、ためらいを含んだキスだった。けれど、それだけで湊の胸の奥にあった不安はほとんど溶けていった。触れた部分から温もりが広がり、同時に「自分は本当に望まれている」という確信が静かに芽生えていく。瑛が一度唇を離し、息を整える。その吐息が湊の頬にかかり、くすぐったい感覚が残る。湊は目を開け、瑛と視線を交わした。そこには迷いがなく、ただ真っ直ぐな熱だけがあった。次の瞬間、再び唇が重なる。今度は先ほどよりも深く、ためらいはない。唇の形が少しずつ変わり、互いの呼吸が混ざり合っていく。湊は肩から力を抜き、その流れに身を委ねた。キスの合間に聞こえる微かな水音が、やけに鮮明に耳に届く。暖房の低い唸りと、二人の浅く早い呼吸音だけが部屋を満たしていた。瑛の指先が頬から顎へと滑り、首筋に沿ってそっと触れる。その動きに湊の喉が微かに震え、呼吸が乱れる。触れられた場所から、さらに熱が染み込むように広がっていく。湊は片手を瑛の胸元に置いた。下にある心臓の鼓動が、指先越しに伝わってくる。それは自分のものと同じくらい早く、不規則で、抑えが効かないようだった。二人の間にあった距離は、もうほとんど残っていない。肩と肩が触れ合い、体温が重なっていく。ランプの柔らかな光が二人の輪郭を淡く照らし、その影が
Dernière mise à jour : 2025-10-05 Read More