瑛の動きは、最初から最後まで一貫して緩やかだった。焦らせるような急き立てる気配はなく、ただ湊の反応を見ながら、触れる場所と力加減を選んでいるのがわかる。指先が肩から背中へ、そして腰へと移動していくたびに、湊は自分の体温が少しずつ溶け出していくような感覚を覚えた。ベッドの上、互いの吐息が同じリズムで重なる。瑛の体温が布団の中で広がり、その温もりが背中や腕だけでなく、胸の奥まで届いてくる。触れられているのは肌なのに、もっと奥の、言葉では説明できない部分を包まれているようだった。瑛はふと手を止め、湊の顔を覗き込んだ。ランプの柔らかい光が瞳に映り込み、その奥の色をさらに深く見せる。湊は息を呑む。何かを言おうと唇を開きかけたが、その前に瑛の手が頬に添えられた。親指が頬骨をなぞり、視線はまっすぐに絡まる。「大丈夫や」低く落ち着いた声が、耳ではなく胸に響く。言葉が空気を震わせ、その振動が身体の奥まで届くような錯覚を覚える。湊はその瞬間、自分の肩から力が抜けていくのをはっきりと感じた。再び唇が重なり、浅く、深く、呼吸を奪っていく。瑛は常に湊の表情を確認しながら、触れ方を変えていく。背中を撫でる手が腰骨をかすめ、もう片方の手が髪を優しく梳く。そのどちらもが、支配ではなく守護のように思えた。外の世界で何度も浴びせられた冷たい視線や、刺すような言葉が、この瞬間だけは遠く霞んでいく。布団の中の温もりと、耳元で聞こえる一定の心音が、すべてを上書きしていく。湊は無意識に、瑛の首筋に腕を回していた。そこから伝わる体温は熱すぎず、しかし確かで、心の奥の震えを静めてくれる。肩に感じる掌の圧は、押さえつけるものではなく、むしろ「離さない」と伝えるものだった。息が触れ合う距離で瑛が名前を呼ぶ。「湊」それだけで胸の奥が熱くなる。呼ばれるたびに、自分がこの空間で確かに存在していると実感できる。瑛の声は、湊の中で散り散りになっていた自尊心や安心感を、ひとつにまとめていく。指先が肩から腕へ、そして胸の中心へとゆっくり移動する。触れられるたびに肌が微かに震え、そこから波紋のように感覚が広がっていく。けれど、その波紋は不安や
Last Updated : 2025-09-24 Read more