素羽は必死になって司野の腕を振りほどこうとした。「やめて、お願い、嫌なの!」けれど彼女の抵抗なんて、司野にはまるで意味をなさなかった。むしろ彼はさらに激しく素羽を押さえつけ、「子どもが欲しいなら、これしかないだろ」と、淡々とした声で言い放つ。彼の瞳の奥には欲望が燃えていた。しかし、その声は至って静かで冷たかった。まるで、素羽のことを、ただの産むための道具としか見ていないようだった。司野はベッドの上ではいつも乱暴だった。だが今夜は、これまで以上に荒々しく、素羽の気持ちなんてまるで眼中にない。快感なんて一切なかった。あるのは、途切れることのない痛みだけ。素羽の顔色はどんどん青白くなっていく。「お願い、離して……本当に痛い……」男の優しさなんて、好きな女にしか向けられない。他の女には、決して与えられないものだ。素羽もまた、その「他の女」に過ぎなかった。何度も何度も激しく貫かれるたびに、素羽の顔はますます蒼白になり、声もどんどん細く、かすれていく。「司野……お願い、離して……もう、本当に痛いんだから……」そのとき、ようやく司野も違和感に気づいた。ふと下を見ると、真新しい白いシーツには赤黒い血が滲んでいる。素羽の真っ白な顔を見て、司野の瞳が細まる。次の瞬間、彼はベッドから飛び降り、慌てて服を着ると、素羽を抱き上げて部屋を飛び出した。廊下でまだ起きていた美宜が、その様子を見て駆け寄ってきた。「司野さん、どこ行くの?」司野は険しい顔のまま、美宜の問いかけには一言も返さず、まっすぐ外に向かった。「司野さん……」美宜が慌てて後を追う。司野は素羽を車の助手席に乗せ、美宜を押しのけて、「どいて、邪魔だ!」と冷たく言い放った。車がエンジン音を響かせて夜の道を駆け抜け、あっという間に闇の中へ消えていった。遠ざかる車を見つめながら、美宜は唇を噛みしめ、悔しそうに足踏みした。この女!わざとこんな夜中に司野さんを振り回してるんでしょ!……病院へ向かう道中、素羽は激しい痛みに意識を失ってしまった。次に目を覚ました時、彼女は見知らぬ病室のベッドで、点滴を受けていた。司野の姿はなく、代わりに医者が入ってきた。「ご主人は、流産のこと、ご存知ですか?」素羽は弱々しく口を開いた。「できれば……このこと、彼には言わな
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