新鮮な空気を吸い込んだ瞬間、美宜の顔に満足げな笑みが浮かんだ。賭けには勝った。同時に、千尋という女への嫉妬が、再び胸の奥で燃え上がる。死んでなお、これほどまでに男を狂わせ、ついには自分の命まで救わせる。なんと運のいい女なのか。そう呪わずにはいられなかった。岩治が彼女を連れて行ったのは、あらかじめ用意されていた隠れ家だった。内外には屈強な男たちが配置され、監視の目は隙がない。やがて、全身に凍てつくような気配をまとった司野が現れる。美宜は、まるで何事もなかったかのように微笑み、以前と変わらぬ調子で親しげに声をかけた。「司野さん、お久しぶりね」司野は無表情のまま彼女の向かいに腰を下ろし、間を置かず本題を切り出す。「千尋の居場所はどこだ」美宜はわざとらしく肩をすくめ、はぐらかすように応じた。「久しぶりに会えたのに、話すことはそれだけ?もっと他にもあるんじゃないかしら」その瞬間、司野の瞳が氷のように冷えきる。重苦しい沈黙が空間を支配し、不快と嫌悪があからさまに伝わってくる。その圧に押され、美宜の笑みは次第に消え、やがて真剣な面持ちで交渉を切り出した。「タケシも助け出して。彼と一緒に、あなたを千尋のところへ案内するわ」その一言で、司野の纏う殺気はさらに鋭さを増した。「付け上がるのもいい加減にしろ」だが美宜は、意に介さず言葉を重ねる。「あなたにそれだけの力があることは知っているわ。千尋と天秤にかければ、私たちの命なんて取るに足らないものでしょう?千尋があなたのせいで苦しみ続けているのを、黙って見ていられるの?」さらに追い打ちをかける。「私はどうなってもいい。でも、あなたの『想い人』が、いつまで耐えられるかしらね……」言い終えるより早く、司野の手が美宜の首を掴み上げた。一瞬で顔が紅潮し、やがて紫へと変わっていく。司野の瞳には陰湿な怒りが燃え、歯を食いしばりながら低く唸った。「調子に乗るなと言っている」窒息の苦しみに喘ぎながらも、美宜の瞳にはなお挑発の光が宿っていた。まるで「殺せるものなら殺してみなさい」と嘲笑っているかのように。彼女には、失うことへの恐怖が一片もない。人生において最も恐ろしいのは、「弱み」を握られることだ。素羽が何度も司野に屈し、妥協を強いられてきたのは、
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