บททั้งหมดของ 地底の悪魔と歯車の魔女: บทที่ 1 - บทที่ 4

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プロローグ これは全部私の所為

 ──立ち入り禁止ほど踏み入りたくなる。開かぬ鍵こそこじ開けてみたい。  そう。だって〝冒険に危険はツキモノ〟から……。 だが今まさに、ネクター・エヴァレットは、その言葉を信じたことを心の底から後悔していた。  天井から崩れ落ちる岩石が、轟音とともに彼女の背後を凄まじい勢いで追いかけてきていたのだ。(立ち止まったら、死ぬ──!) 呼吸は乱れ、心臓は今にも破れそうなほど激しく脈打っていた。必死に走っても、前方に出口の光は見えない。 彼女がこの地底洞窟へやって来たのは、ただの探検目的だった。  祖父の遺した冒険手帳に記された謎──〝五百年の孤独〟とやらを、この目で確かめたくて。 ネクターはちらりと後ろを振り返る。  だがその行為を、すぐに後悔した。 崩れ落ちてくる岩だけではない。  それに引き連れられるように、〝人のような何か〟が迫ってきていたのだ。 人のような何か──。  そう呼ぶのは、人間と断定できない理由があった。  暗闇の中、その存在は赤く光る双眸をぎらつかせていたのだ。その色はまるで、警告ランプのそれのよう。 見たところ、自分とそう変わらない年頃か、或いはやや年下に見える。  十七歳か、それ以下。体格は小柄で、顔にはまだ幼さが残っていた。 ──けれど、それは決して純粋な子どもが持つ無垢な幼さではない。  むしろ、カエルの口に爆竹でも突っ込みそうな──そんな狡猾で残酷な性質を孕んでいそうな稚さだった。  その顔立ちは、整ってはいる。だが三白眼気味の吊り上げった瞳のせいでどうにもこの印象を際立たせていた。 見た目だけなら、どう見てもただの人間だ。ただ、悪人顔というだけで──。 その〝何か〟と、視線がカチリと交差した瞬間、ネクターは慌てて前を向き直した。顔は青ざめ、心は凍りつく。 轟音の中、背後からその存在の掠れた叫び声が追いかけてくる。  何かを必死に訴えているようだが、異国の言葉のせいで、まったく理解できなかった。(──っ! どうして、どうして、こんなことになっちゃったの!) 思えば、全ては自分の所為だ。  ネクターの脳裏には、走馬灯のように、たった十七年の短すぎる人生が浮かび上がっていた。
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1話 機械仕掛けの夢と、空飛ぶ少女

 五月中旬。青々とした新緑が輝く丘陵地帯では、羊たちがのんびりと牧草を食んでいた。  昼下がりの空は快晴で、雲ひとつない蒼天が頭上に広がっている。    そんな玻璃のように澄み切った空に、黒い点がひとつぽつりと浮かんでいた。雷鳴に似た重低音を響かせながら、その点は南西の空へ向かって猛烈な速度で移動している。 その正体は、空を駆けるバイク──飛行二輪だった。    陽光に鈍く光る黒鉄色の大型車。側車付きのその機体に跨がるのは、枯れ草のような生成り色と焦げ茶色のドレスを着た少女。  彼女はレザー製のパイロットヘルメットをかぶり、二つに結った桃金色の長髪を風になびかせていた。 唇には機嫌の良さを隠しきれない笑みが浮かんでいる。   (──やっとの休暇! 今日は絶対に、良い日になるわ!)    ゴーグルの下、金色に近い琥珀の瞳を爛々と輝かせながら、彼女──ネクター・エヴァレットは、最近ラジオでよく流れている流行歌を、鼻歌まじりに口ずさんだ。 ──十七歳の少女、ネクター・エヴァレットを一言で言い表すなら、〝異端者〟だろう。 金色の瞳に、赤みを帯びた髪──それはまさに、古くから伝わる〝魔女〟の姿そのもの。  しかも、魔女といえば物語の中で空飛ぶ箒に乗るのがお約束だが、彼女の場合は飛行二輪に跨がって空を駆けるのだから、さしずめ〝現代の魔女〟といったところか。 とはいえ、すでにこの国──イフェメラ王国では、貴族制は数十年前に廃止され、蒸気機関の発展により産業が飛躍的に成長している。魔女狩りや異端審問といった時代も、今や数百年も前の話。忘れられて当然の過去となっていた。 ……そんな時代に生まれて、殺されずに済んでよかった。生まれた時代が良かった。  ネクター自身、何度そう思ったことか。だが、彼女が〝異端者〟と呼ばれる理由は、容姿だけにとどまらない。  むしろ、その〝職業〟こそが最大の理由だった。 産業革命の始まりから二百年程が過ぎたとはいえ、女性が職業に就くのはまだまだ珍しい時代。商人や農婦、或いは娼婦などがその例外に挙げられる程度だ。 同じ年頃の乙女といえば、上流階級の娘なら教養を身につけるため学生生活を送りながら縁談を待ち、庶民の娘なら家の手伝いをしながらやはり縁談を待つ──そんな未来が〝当然〟とされていた。家
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2話 誰にも縛られぬ空の下

 そんなネクターの生家は、イフェメラ王国の西方に位置する大都市スチールギムレットにある。  その地の名門──ブラックバーン家と聞いて、知らぬ者はこの国にはいないだろう。 ブラックバーン社。王国軍を主な取引相手とする飛行船製造の巨大企業だ。  莫大な資本力を持ち、「ブラックバーン社なくしてイフェメラ軍は成り立たない」とまで言われている。 そして、その社の経営を担っているのが、ネクターの母・アナスタシアである。 婿を取って女が家督を継ぐ──代々続く女系家族という点もまた、異端の名を広める一因となっていた。  だが、それは同時に、ネクターの人生に重くのしかかる宿命でもあった。 なにしろ、ブラックバーン家では〝長女が経営者を継ぐ〟のが絶対的な決まり。  ネクターは一人っ子。  つまり、家督を継ぐことは、生まれた瞬間から決まっていたのだ。 将来の夫となる相手は優秀な技術者に限る。  雇う人材もまた、王国屈指の技術者ばかり。  経営を担う女は、まるで女王蜂のようにその頂点に立ち、全てを掌握する──。 けれど、ネクターの関心は経営などではなかった。  幼い頃から、自社工場に入り浸っていた彼女の心を捉えていたのは、むしろ〝技術〟のほうだった。 壊れた時計やラジオをお小遣いで買い取り、分解しては中を観察するのが日課。  歯車、リベット、ゼンマイ、香箱……その全てが精密に噛み合って動く、〝完璧な小さな世界〟にネクターは夢中になった。『私、大人になったら叔母さんみたいな修理技師になりたいの!』 『おじい様みたいに素敵な冒険もしてみたい!』    そう語る幼いネクターに、母は困り顔で笑っていた。だがその想いは年を経ても変わらず、十三、十四になっても言い続けた。 そして十五歳の春、ついに母の堪忍袋の緒が切れた。  家庭教師による教育が一段落し、進学を控えた時期だった。 激しい口論の末、ネクターは与えられた未来を拒絶し、半日かけて汽車に乗り、アッシュダストの叔母の元へと家出したのだ。  ──それも、入学が決まっていた学院の入寮日前日に。 その選択が母を怒らせることは、もちろん分かっていた。  だが、それでもなお、自分の手で夢を叶えたかった。 当然、母は激怒し、ネクターを連れ戻しにアッシュダストまで訪ねてきた。  けれど、ネクターは頑とし
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3話 地底に灯る星々

 ──ネクターの祖父が遺した冒険記録には魅力溢れる言葉が沢山散りばめられていた。『風の祭壇』に『海神の祝福』、それから『魔獣の舌』なんていうユニークなものも。そのようなロマンに満ちた言葉で、十ほどの遺跡が記されていた。    中、ネクターが子どもの頃から引きつけられた言葉は『五百年の孤独』だった。 どんな場所で、どんな光景が待っているのだろうか。  幾度となく想像を巡らせてきた。  かつての王族や貴族が遺した財宝か、或いは古代の人々が残した儚い壁画か。はたまた岩の隙間に眠る巨大な金剛石の原石か── 飛行二輪から降り立ったネクターは、今一度、古びた冒険手帳を取り出して確認した。 地底遺跡──その名の通り、深い洞窟であることは想像に難くない。  ただ、祖父の手記によれば、縦穴ではなく、比較的なだらかで、狭すぎもしない洞窟らしい。中腹には蒼く澄んだ地底湖があり、それはそれは美しいのだと、余談のように記されていた。 だからこそ、ネクターは登山用の厳重な装備ではなく、仕事用の地味なドレスで訪れることにした。それでも念のため、飛行二輪の側車からロープを取り出しリュックサックへ詰め込むと、ガス式カンテラを手に取った。「さて、行きましょ……」    独りごちるが、すぐに身震いが起きた。  ──やっとだ。やっとこの日が来たのだ。   幾度も夢に見た場所へ、自分の足で辿り着いた。その喜びに、思わず声を漏らす。  一頻り喜びに唸った後、ネクターは〝落石注意・立ち入り禁止〟の札の下がったロープを跨いで洞窟に向かって歩み始めた。 *** 洞窟に潜ってしばらく経った頃、彼女は地底湖の近くまで辿り着いていた。  だが──あれほど心を躍らせていたネクターだったが、この遺跡の正体に気付いたのは、意外と早い段階だった。 そう。ここはどうやら、戦争遺跡、或いは軍事遺跡だったのだ。 あちこちに錆びついた甲冑や短剣が転がっており、澄んだ地底湖の底を覗き込めば、黄ばんだ人骨らしき影がちらほらと沈んでいる。 正直、気味が悪い。──だが、この程度の雰囲気には慣れていた。探索者として数々の遺跡を踏破してきたネクターにとって、そう珍しいことではない。 とはいえ「五百年の孤独」と銘打たれた戦争遺跡となると──  どうにも胸騒ぎがする。   (綺麗な軍服
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