葉月は窓の外を見つめ、ぼんやりしていた。甚太が戻ってくるのか……これは葉月も予想外だった。葉月が最後に甚太に会ったのはいつだったろう?たしか3年前、葉月と逸平の結婚式に、甚太は来ていた。しかし来てすぐに、甚太と逸平は二人とも姿を消してしまった。再び戻ってきた時、甚太の口元には殴られた跡がついていて、逸平は全身から殺意が湧いていた。甚太が葉月に近づこうとした瞬間、逸平は葉月を自分の後ろに引き寄せた。「どうぞお引き取りください。ここはお前を歓迎しません」甚太は結局、祝いの品とご祝儀を残すだけで、狼狽して去っていった。そして甚太が持ってきたものは、逸平にゴミ同然に扱われ、捨てるように命じられた。最初から最後まで、葉月は何が起こったのか、彼らが何を話したのか、具体的なことを何も知らなかった。ただ、逸平は戻ってきてからずっと機嫌が悪く、葉月は彼が怒りを必死に抑えているのを感じていた。そしてその夜、その怒りはすべて葉月に向けられた。葉月がどんなに泣いて勘弁を求めても、どんなに止めてと叫んでも、逸平はまるで聞こえないかのように、必死で彼女を引きずり込んでいた。自分と一緒に堕落させようとした。しかし、甚太よりも葉月先に戻ってきたのは、葉月の兄、善二だ。葉月が家に着いたとたん、菊代から電話がかかってきた。葉月は電話に出た。「もしもし、お母さん」電話の向こうで菊代は「ああ」と返事をした。それから言った。「葉月、お母さんから話があるの」「何の話?」電話の向こうではしばらく沈黙が続いた。次の言葉をどう切り出すか迷っているようだ。葉月は言った。「お母さん、はっきり言って」菊代は電話越しに軽くため息をついた。「葉月、お兄さんが帰ってきたよ」善二はすでに一の松市についた。今日の午後5時過ぎに、国際空港に着き、清原家の者が迎えに行っていた。帰ってきたのは善二一人ではなく、妻と3歳になったばかりの息子も一緒だ。葉月はその話を聞くと、笑みが消え、瞳が暗く沈んだ。葉月が黙っていると、菊代はますます不安になってきた。「葉月、お兄さんはいきなり帰ってきたの。私たちも着いてから知ったのよ」菊代は知っていた。葉月と善二の関係は元からあまり良くなかった。さらに数年前に起きたことによって、二人の関係は
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