善二は二歳の時に失踪した。八歳になるまでは見つからなかった。清原家の長男が行方不明になった六年間で、三つの場所に転売されていた。四歳の時に養父母の家に売られた。その夫婦は子供ができなかったから善二を買ったのだ。だが養父はアルコール依存症で、長年にわたってDVしていた。養母はそれを冷ややかに見ており、所詮買ってきた子供だからと、自分にトラブルをかける必要がない。善二はそんな環境で八歳まで育ってきた。正雄と菊代は罪悪感に駆られ、善二を甘やかして、あの年月の埋め合わせをしようとした。しかしこの償いは、結局善二を今のような人間に育て上げてしまった。幼い頃の影は善二につきまとい、清原家に戻っても、根深い劣等感から逃れられなかった。同じ父母から生まれた実妹と向き合う時、葉月が華やかで皆に囲まれている姿を見て、善二は自分が隅っこの塵のように感じた。善二はこの家にそぐわず、よそ者のようだった。今に至るまで、正雄と菊代は善二に失望しきっていても、本当に冷酷に扱うことはできなかった。善二が「あの時俺を迷子にさせなければ、こんなことにはならなかったんだ!」と言う度、全ての非難は重苦しい無力感に変わり、正雄と菊代の息を詰まらせた。だからこそ、正雄と菊代は葉月を守るんだ。善二に対しても罪悪感を抱かないものを必要とした。それに最適任なのは、逸平だった。「かばう」という言葉は、少し懐かしい響きになっていた。昔の逸平は、無条件で葉月をかばってくれる人だった。しかし今では、葉月と他の人で、逸平はもうためらわず葉月を選ぶことはない。もし葉月と有紗の間で争いがあれば、逸平は有紗の味方をするだけだ。「父さんが今日、離婚のことを聞いてきた」その時の噂はやはり広がっていた。正雄と菊代はとっくに知っていた。「俺はっきり答えたよ、デマだ、俺たちは離婚しないと」葉月は逸平を見つめ、「井上社長、そんなに断言して大丈夫ですか?後でひっくり返されたりしたらどうします?」逸平は軽く笑った、「お前が騒がせなければ、そういうことはないさ」「全部私のせいってこと?」「そんなつもりはない」「それと、父さんと母さんが言った。子供を作るスケジュールを意識しろって。俺たちも30歳に近づいてるし、そろそろ作らないと」逸平の口調は淡々としてい
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