優奈の口ぶりから察するに、相手を最も深刻な状況に追い込むつもりらしい。弁護士が帰った後も、葉月はまだぼんやりしていた。二億円がこんなにあっさり葉月のものに?この弁護士、なかなかやり手のようだ。葉月は、怪我をしているせいで、今日は病院にいる菊代を見舞いに行けず、心配をかけてしまうのを気にしていた。足を挫いているが、それでもスタジオに行きたかった。スタジオは今も散らかったままで、思い出すだけで胸が苦しくなり、全身がむずむずしてしまう。心を決めた。行く、絶対に行く。荷物をまとめていると、インターホンが鳴った。足を引きずりながらゆっくりドアまで歩いた。開けると、目の前に逸平のすらりとした姿が現れた。逸平は今日濃い灰色のコートを着て、ますます冷たい白さが際立つ肌をしていた。今、その深い目で葉月をじっと見下ろしている。「出かけるつもりか?」眉を上げながら、明らかに不賛成といった声で尋ねた。葉月が軽くうなずいて振り返ろうとした瞬間、体が浮かび上がるのを感じた。逸平は何も言わずに葉月を横抱きにした。優しいが容赦ない動きで、「足を挫いてるのにまだじっとしていられないのかよ」とつぶやいた。「あなたこそ足挫いてるよ!」葉月は恥ずかしさと怒りで逸平の肩を小突いたが、傷を引きずる動作で思わず「いたっ」と声を漏らした。逸平は軽く笑い、その胸の振動が服越しに伝わってきた。そっとソファに下ろすと、上から見下ろしながら尋ねた。「言ってみろ。どこに行くつもりだったんだ?こんな状態でも行きたいほどに」「スタジオに」葉月が言った。逸平は淡々とした表情で言った。「急ぐことじゃない。怪我が治ってからにしろ」葉月が顔を上げて逸平を見つめ、頑なな口調で言った。「もしあなたの会社が壊されたら、のんびり養生なんてしてられないでしょう?」この仮定は逸平には当てはまらなかった。「誰もそんなことはできないさ」それに、グループの警備も金食い虫じゃない。葉月は本当に逸平と話が続かないと感じ、小声で言った。「待ってなさい。そのうちあなたの会社を壊しに行くから」逸平は眉を上げた。「いいぞ、お待ちしてる。自らお出迎えするよ」葉月はここで逸平と口論する気もなく、ソファから立ち上がると、足を引きずりながらスマホを取りに行った。今日はどうしても
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