あの夜駐車場で目撃したことに卓也は驚かれ、夜も眠れなかった。翌日の仕事もずっとぼんやりしていた。誰かに話したかったが、考えに考えた末、結局逸平を訪ねることにした。真夜中に逸平の家のドアを叩いたが、いくら待っても誰も返事しなかった。「あれ?おかしいな、いない?」ちょうど逸平に電話しようとした瞬間、外から帰ってきた葉月に出くわした。卓也が葉月を見た目は輝いた。スマホをしまい、葉月に手を振って呼びかけた。「葉月さん!」この呼び方はどうしても直らないようだが、葉月ももう気にせず、好きに呼ばせていた。「家にいませんか?逸平のやつは」卓也の様子では、ドアの前で立ち往生していたようだった。卓也は適当に手を振りながら、葉月に近づいた。元々は逸平を探すつもりだったが、今は葉月に話そうと決めた。壁にもたれかかり、だらしない姿で葉月の前に立った。葉月もすっかり慣れっこになっていた。「葉月さん、実は葉月さんに用があって来ました」「私に?」「そうですよ!」卓也の狡そうな笑いに、葉月は少し鳥肌が立った。「葉月さん、すごいネタを知ってるんだけど、聞きたいですか?」卓也は葉月に向かってまゆげを動かした。葉月は首を振った。「別に」特に逸平に関するネタなら、なおさら聞かなくていい。あまりにもあっさり断られ、卓也は何を話せばいいかわからなくなった。「あーもう!葉月さん、聞きたいでしょ!」葉月の興味を引かなければ、今度は卓也が辛くなるのだ。「……」葉月は諦めたかのように返事するのをやめた。卓也の様子を見て、葉月は笑うしかなかった。「まあ、いいわ。話してみてちょうだい」聞かなければ、卓也がずっと悶々としたままになるのが心配だった。計略が通じて、卓也は喜んで笑った。「じゃあ、誰に関するネタか当ててみてください」葉月は考えずに言った。「逸平か?」「おお!」卓也が背筋を伸ばして嬉しそうな顔をした。その顔を見て葉月は自分が正解したと思ったが、次の瞬間卓也が言った。「逸平のこと結構気にしてるじゃないですか、葉月さん?話しただけで逸平のこと思い浮かべるなんて」葉月は思った。卓也という男は本当に調子に乗らせすぎてはいけないのだ。そうでないと、すぐに図に乗ってしまう。「言う?言わないなら帰るわ」葉月はドアを開
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