葉月がキッチンカウンターで水を飲みながらスマホを操作していた時、突然のインターホンの音に驚いた。スマホの時刻を見ると、もう夜11時を回っている。こんな時間に誰が訪ねてくるというのだろう?このマンションは1フロア2世帯タイプだが、逸平が引っ越してからは、この階には葉月一人しか住んでいない。不安だったので、数日前に玄関に監視カメラを取り付けてもらっていた。今その監視カメラが役立つ時が来た。廊下全体がくっきり映し出され、壁にもたれて床に座り込んでいる逸平の姿がはっきり見えた。モニターを見て、葉月は思わず驚いた。逸平がどうしてここに?しかもあんな様子で。非常階段のドアの陰に隠れていた数人は、葉月がなかなかドアが開かないことにいらだち始めていた。太一が心配そうに言った。「葉月さんもう寝ちゃったんじゃないか?」「もう一度インターホンを押してみよう。ただ聞こえてないだけかも」卓也はこのまま引き返すつもりはなかった。せっかくここまで連れてきたんだ。何の成果もなく帰るなんて割に合わない。「しっ」彼らが話していると、裕章が突然静かにするよう合図した。葉月がようやくドアを開けたからだ。彼女は分厚いコートを羽織っていた。外は家ほど暖かくない。妊娠中の彼女は体調管理に特に気を遣っており、今はちょっとした風邪にも気をつけないといけない。まず少しだけドアを開け、片目を閉じ、規則正しく呼吸をしながら、まるで眠っているかのように座り込んでいる男を見た。逸平に目覚める気配が全くないのを見て、葉月はためらった後、彼に近づいた。男の前に立ち止まり、のぞき込むようにして、しばらく静かに彼を見つめた。そして、ゆっくりとしゃがむと、彼と同じ目線の高さになった。逸平の体からは強い酒の匂いがした。シャツの襟は少し開き、服や前髪も乱れ、普段とは違ってだらしなく見えた。酒で頬が薄紅に染まり、普段の鋭さは消え、驚くほど従順で、どこか脆そうにさえ見えた。葉月が周囲を見回し、非常階段の方に視線をやった時、ドアの陰にいた数人が慌てて頭を引っ込めた。まるで泥棒みたいだ。卓也を支えながら付き添ってきた運転代行ドライバーさんも、彼らが何をしているのかわからなかった。だがかなりの金をもらったので、この先数日は遊んで暮らせる。それ
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