葉月は気まずくなって、目を背けた。あの時の後継を思い出すと、葉月の心は今もどうしようもなく痛いた。逸平は焦り、葉月に近づこうとした。「葉月、本当に俺に会いに来てくれたのか?」二人の距離はとても近くなり、彼の吐息には微かな酒の香りが混じっていたが、今はそれほど不快に感じなかった。葉月は彼の方を見ないまま、ただ軽く「うん」と応えた。逸平も、十九歳だった頃のあの大雪の夜を思い出していた。異国で初めて迎えた誕生日だった。逸平は皆からの祝福を受けたが、葉月からの連絡だけがまだ届いていなかった。その日は一日中落ち着かなかったが、それでも葉月のために言い訳を探し続けていた。きっと忙しいのだろう。彼女が自分の誕生日を忘れたなんて信じたくなかった。しかし時間が経つにつれ、自分を欺くことはできなくなっていた。いくら忙しくったって、メッセージを送る時間ぐらいあるだろう?その日、逸平は誕生日を楽しく過ごす気にはなれなかった。当時、偶然にも有紗は彼と同じ学校に通学していた。ただ、彼女はもうすぐ卒業するところだった。有紗がもちろん彼の誕生日を知っていたが、逸平は彼女が自ら贈り物を持って彼の住まいまで来るとは思ってもいなかった。逸平はソファに横たわり、機嫌が悪く、外に出る気もなかった。しかし外は吹雪で、有紗をずっと外に待たせておくこともできなかった。どうせみんな一緒に育った仲だし、情だってある。彼は外に出たが、有紗を家に招き入れることはしなかった。ただこう言った。「有紗さん、外は吹雪いているし、早く帰った方がいいよ」有紗は逸平にあしらわれることに慣れていた。彼女はただ誕生日プレゼントを逸平に手渡して言った。「お誕生日おめでとう」逸平は彼女から差し出された贈り物を見て、また胸が痛んだ。なぜ、いちばん祝ってほしい人から一言の祝福の言葉すらもらえないのだろう?誕生日なんて別にめでたくもない。ただ、葉月には覚えていてほしかった。気にかけていてほしかっただけなのに。以前は逸平の誕生日を誰よりも気にかけてくれていた葉月が、なぜ半年海外に行っただけで忘れてしまったのだろう?逸平は感情を表には出さず、贈り物を受け取り、有紗に礼を言った。有紗は逸平の様子を見て、何かを察したようだった。「
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