葉月は逸平の胸の鼓動を感じた。彼の喉に千言万語が詰まっているように思え、その吐き出せない重みが、まるで彼女の胸元にのしかかっているように感じた。しかし、長い時間待っても、逸平が何かを口にする気配はなかった。激しく渦巻いていた感情を、逸平は結局無理やり押し殺したようで、言葉はかすかなため息に変わり、葉月の温かい首筋に溶け込んでいった。「何でもない……」彼は結局そう呟くだけだった。葉月は小さくため息をつき、詮索せず、ただ彼の手に重ねた自分の手を強く握った。言葉はなくても体温で伝えたかった――私が傍にいるから。あなたの気持ち、私にはわかるよ、と。言葉を必要としない、二人だけの心の会話だ。葉月は逸平の弱さを受け入れながらも、彼の心の殻を無理に壊そうとはしなかった。「横になって少し眠って」葉月が口を開いた。逸平はまだ葉月を抱いていたいようで、そのまま動こうとしなかった。葉月は少し困ったように「このままじゃ私が疲れちゃう。横になってから抱きしめて」と言った。彼女はこの一日、逸平を甘やかしすぎたと感じていたが、彼を見ていると心が痛み、今は言い争う気になれなかった。全てはお爺様の容体が良くなってからにしよう。葉月の言葉を聞いて、逸平はようやく彼女から手を離した。しかし横になると、逸平はまた手を伸ばし、彼女の腰を抱き、甘える子供のように彼女の胸に顔を埋めた。葉月は避けもせず、彼に抱かれたままにしていた。逸平は葉月の態度にすっかり安心したようだった。彼はまるでそこがすべての風雨や圧力から隔てられた避難所であるかのように、さらに深く葉月の胸元顔を埋めた。葉月の体に漂う安心感のある淡い香りが逸平の鼻をくすぐり、耳元には彼女の規則正しい心音が響いている。彼は張り詰めていた神経がようやく緩んでいくのを感じた。不安や恐怖がこの瞬間だけ遠ざかり、逸平は葉月を抱きしめ、唯一の浮き木を掴んだように、ようやくゆっくりと目を閉じて眠りについた。安らかな眠りではなかったが、彼は不安そうに眉を寄せたまま眠り、やがて穏やかな寝息を立てた。葉月は少しも動かず、彼が寄りかかるままにしていた。規則的な寝息を聞き届けてから、ようやく痺れた肩を少し動かし、自分も楽な姿勢に変えて浅い眠りについた。気がつくと、逸平は黄昏のぼんやりとした光の中
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