どういうわけか、息子の他人事のような態度に、隼人は胸に一抹の違和感を覚えた。紗季が息子に対してこれほど冷淡なのも無理はないのかもしれない。陽向は隼人が知らないうちに、隼人と美琴が入籍したことを知っていたのだ。だが、息子は理由を尋ねに来ることもなく、紗季がどうなるのかを気にかけるそぶりも見せなかった。そして今、美琴が離婚しないでほしいと口にしても、陽向は何の反応も示さない。隼人の顔は知らず知らずのうちに険しくなっていた。その反応を見て、美琴ははっと息をのみ、ためらいがちに言った。「どうしたの、隼人?もし迷惑なら、やっぱりしばらくは部屋を借りて住むわ。無理に自分の家を持とうとしなくてもいいのよ」彼女は俯き、不意に目頭を赤くすると、ティッシュで目元を拭った。「あの時、ここを離れるときに家を売って治療費に充てなければよかった。ここに自分の家がないと、いつまでも漂っているようで、帰る場所がない気がするの」その言葉に隼人の心は揺さぶられた。彼は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。「すまない。あの時、俺の祖母を助けるためでなければ、君が心臓病になることも、財産をすべて投げ打って海外で治療することもなかった」隼人はしばし考え込んだ。今はまず紗季との間に生じた隔たりをゆっくりと解消することに専念すればいい。離婚については、また後にすればいい。どうせ記念日をもう過ぎてしまい、もともと考えていた計画は水の泡となったのだから。紗季がそばを離れさえしなければ、いつかすべてをはっきりと説明できる時が来るはずだ。「家は俺が買う。君がお金を出す必要はない」隼人がそう言った時、ちょうど紗季が化粧室から出てきたところだった。彼は化粧室に背を向けていたため、その言葉を聞いて紗季の体が硬直したことに気づかなかった。美琴はぱっと顔を輝かせ、興奮した様子で隼人の手を掴んだ。「本当、隼人?私に家を買ってくれるの?そんな、お金を使いすぎよ」「気にするな。君が受け取るべきものだ。俺に遠慮する必要はない」隼人はそう言うと、さりげなく手を引き抜いた。その光景を見て、紗季は拳を握りしめた。心がすうっと冷えていくのを感じた以前、陽向の通学のために買った学区内の家は、すべて自分自身のお金で賄った。隼人が家を買ってや
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