二人は子供のようにじゃれ合い、笑い声を響かせながら川上へと向かった。それから刻限にして一刻も経たぬうちに、落とし主は見つかった。周歓の想像では、草鞋の主は身なりに無頓着な木こりか、あるいは粗野でうっかり者の村人のはずだった。しかし、目の前に現れたのは、夢にも思わぬ風情の人物であった。それは一人の男だった。真っ白の長大な道服を纏い、巨岩に背を預けて静かに佇んでいる。微睡んでいるのか、あるいは単に目を閉じて憩っているのかは判然としない。傍らには一頭の青いロバが繋がれ、のんびりと草を食んでいた。何より奇妙なのは、その男が目を閉じながらも、腕には一本の釣り竿を抱えていることだ。左足には草鞋を履いているが、右足は素足のままで、塵一つない清潔な指先が覗いている。飾り気のない質素な身なりではあるが、だらしない印象は微塵もなく、その佇まいは悠然として、骨の髄まで俗世の垢を落としたような清冽な空気を纏っていた。孟小桃もまた、周歓と同じ驚きを共有していたようだ。彼は周歓の耳元に顔を寄せ、囁き声で尋ねた。「……ねえ、俺たち、仙人にでも出くわしたのかな」「さあな」周歓は微笑みを返し、声を潜めた。「お休み中のようだから、邪魔をしないようにしよう」そう言いながら、周歓は足音を忍ばせて近づき、拾った草鞋を男の傍らにそっと置いた。そのまま立ち去ろうとしたが、ふと、「もし寝返りを打って、また川に蹴り落としたら二度手間だ」と思い直した。どうせなら最後まで親切を尽くそうと、周歓は音を立てぬよう細心の注意を払い、そっとその草鞋を男の右足に履かせてやった。「……来てくれましたか」その時、温もりを帯びた、鈴を転がすような澄んだ声が耳を打った。周歓が驚いて顔を上げると、眠っていたはずの男がいつの間にか眼を開いていた。間近で見るその顔立ちは端正であり、靄がかかったような不思議な瞳が、瞬きもせずに周歓を見つめていた。周歓は呆気に取られ、言葉を失った。ようやく絞り出すようにして、男の右足を指差した。「……草鞋が、川に流れていましたので」だが、道服の男は答えず、ただ品定めでもするかのように、じっと周歓の顔を隅々まで観察している。いかに場慣れした周歓といえど、これほど浮世離れした人物に見つめられれば、気恥ずかしさを禁じ得ない。彼が視線を逸らそうとした刹那、男はゆっくりと上体を
Last Updated : 2026-04-19 Read more