緑珠は密通の現場を押さえんとして失敗に終わり、逆に周歓の返り討ちに遭って、その翌日には冷宮送りの身と成り果てた。引き立てられていく道すがら、緑珠の声は泣き叫ぶうちに嗄れ果て、その爪は剥がれるのも構わず、風雨に晒された宮壁に幾筋もの赤い痕を刻みつけた。最後に一度だけ振り返った視線の先、遥か遠くの木陰に周歓が佇んでいるのが見えた。だが、こちらを見つめるその眼差しは、何の感情も映さぬ氷のように冷え切っていた。軒児が忽然と姿を消したのは、それから三日後のことである。重罪人を収監する牢獄へ、数人の近衛兵に連行されるのを見た、と囁く者もいれば、深夜、牢獄の方から凄惨な助けを求める声が聞こえた、と噂する者もいた。周歓が人を遣わして調べさせたところ、牢内からは血に濡れた履物の片方が見つかったのみであったが、それはまさしく軒児が常々用いていたものに相違なかった。雨は七日七晩降り続き、宮壁の石垣は、いつしか青々とした苔に覆われていた。一度だけ、緑珠が正気を失ったかのように配膳係の宦官の衣の裾に縋りつき、自分は周歓に陥れられたのだと皇后に伝えてほしい、と泣いて懇願したことがあった。だが、宦官はただ深く嘆息し、昔の誼で命だけは助けてやったのが皇后陛下のせめてもの情けであろう、と告げるのみ。そのうえ、あの日を境に、皇后は西域から献上された名高い香木さえも、ことごとく火にくべておしまいになった、と付け加えた。やがて、冷宮の前を通りかかる者は、塀の向こうから響く狂おしい笑い声をしばしば耳にするようになった。宮中の小径に舞い散る落ち葉が風に吹かれて渦を巻く様は、人々の記憶から消え去った名を持つ者たちの運命に、どこか似ていた。しかし、緑珠の失脚は、周歓への嫌疑が晴れたことを意味するものではなかった。陳皇后は猜疑心の深い御方であり、一度抱いた疑念をそう易々と手放すことはない。緑珠が冷宮に幽閉されて十日目のこと。陳皇后は瓊花台にて宴を催した。その席上、傍らに控える懐竹を横目で一瞥した皇后は、ふと眉根を寄せた。そういえば、この懐竹もまた、周歓が推挙した人物であった。もし周歓に裏があるのならば、この懐竹とて潔白ではあるまい。無論、その懸念をおくびにも出すことなく、皇后はさも何事もないかのように手を振って懐竹を下がらせると、階下に新たに跪く男へと視線を移した。男の名は|趙舒《ち
Last Updated : 2025-12-28 Read more