翌朝、周歓は約束通り早朝に中宮へと赴き、懐竹を伴って東宮へと向かった。 懐竹は昨夜よく眠れなかったとみえ、目の下には濃い隈が浮かんでいた。道中もずっと浮かない顔で、一言も口を利こうとしない。東宮の長楽殿に到着して、ようやく重い口を開いた。 「僕は、何か至らぬことを仕出かしましたでしょうか」 周歓はわけが分からず、問い返す。 「藪から棒にどうした」 「では、僕のことがお嫌いなのですね。邪魔だとお思いなのでしょう?」 懐竹は顔を上げ、周歓の瞳をじっと見据えた。 「僕が字も読めぬゆえ、お側にいるとあなたの品位を損ない、お顔に泥を塗ることになる。そうなのでしょう?」 なんと、まだ昨夜のことを根に持って拗ねていたのか。 「馬鹿を言うな。俺がお前を嫌ったり、邪魔に思ったりするはずがなかろう」 「嘘です!懐竹は愚かではありますが、あれほどはっきり言われて分からぬほどではありません」懐竹は周歓の袖を強く掴んだ。「僕、必死に読み書きを学びます。ですから、どうか、僕を見捨てないでください……」 周歓は懐竹を一瞥し、首を振って溜め息を落とした。「お前という子は、なぜそうも融通が利かんのだ。昨夜俺が言ったことは、一から十までお前のためを思ってのことだと分からんのか」 懐竹は顔を上げたものの、きょとんとしている。「ぼ、僕には、分かりかねます……」 周歓はもどかしげに言った。「『良禽は木を択んで棲み、賢臣は主を択んで仕う』。『君子は危うきに近寄らず』。これでも分からんか」 懐竹が呆然と自分を見つめているのを見て、周歓は己の額をぴしゃりと叩いた。
Last Updated : 2025-12-16 Read more