「俺の方から今日のことはあいつの父親、九条社長には伝えておく。あんな人通りの多い道の真ん中で大声出して騒がれて、もし通報されたら社長も困るだろうから。左遷の話は決定らしい。あいつが東京から出るまでの間、しばらくは美月も気をつけていて」 せっかくまたベガに行くことができると思ったのに。 役に立てることが見つかったと思った。 悲しかったけど、私が無理矢理出勤してスタッフさんたちに何か迷惑をかけてもイヤだ。「うん。わかった。孝介が近くから居なくなるまで、ベガに行くのはやめるよ。行ったり、行かなかったりでベガの人たちにまた迷惑かけちゃったけど」「それは美月が悪いことじゃないから。ベガのリーダーには俺の方から上手く説明しておく。孝介も引っ越したら忙しいだろうし、前みたいに社長のコネも使えなくなるから、仕事だって大変になるだろう。俺たちのことなんて思い出すヒマもなくなる。それまで我慢だな。あー。本当にいつまでもネチネチしてきて嫌な性格だな、あいつ。自分の行いが悪いって認めたくないんだろうな」 はぁと迅くんは溜め息をついた。「ごめん。迷惑かけて」「美月は謝らなくていい。とりあえず、出かける時とか注意して。一応、な?」「うん」 その一カ月後――。「迅くん、朝だよ!起きて!?」「う……ん。もうちょっと寝たい……」 彼は枕に顔を埋めた。「ダメダメ!遅刻するよ!」 私は変わらず迅くんと半同棲生活を続けている。 不安視していたことは何も起こらず、平和な日々だ。 孝介はもう地方で働いていると聞いた。私と住んでいたマンションも引っ越したそうだ。「今は真面目に働いているって九条社長が言っていたけど。他の社員もいる手前、しばらくはこっちには戻って来させないって言ってた」 迅くんがそう教えてくれた。 孝介が何かしてくるとか、考えすぎだったのかな。孝介はあれからベガにも現れていない。 本当にこれで孝介と離れることができて良かった。 相変わらず迅くんは仕事が忙しくて、一緒にいる時間も短いけれど、それでも彼が「ただいま」と変わらず帰って来てくれるだけで嬉しい。 夜の彼は激しすぎるところもあるけど、それも彼の愛情表現だと最近は思うようにしていた。そんなある日――。「美月、やっぱり一緒に住むところ探そう?」 仕事から帰って
Last Updated : 2025-11-26 Read more