席への案内後、料理をテーブルに運ぶくらいならプラスでできるかもしれない。テーブル番号だって、わかる。 私はキッチンにいる平野さんに声をかけた。「お忙しいところ、すみません!私、もっと動いても大丈夫ですか?お待たせしてしまっているお客様もいらっしゃるので。もちろん、フロアーのスタッフさんに相談しながら動きますが」 キッチンもオーダーが何件も入っているらしく「すみません。お願いします!」 平野さんは険しい顔をしながらも<もう仕方がない>そんな感じで提案を受け容れてくれた。 フロアー担当のスタッフさんに相談をし、私の対応量を増やしてもらった。「お待たせいたしました。何名様ですか?」 こんなに忙しいの本当に久しぶり。 大変だけど、なんだか懐かしい。 高校の時も飲食店でアルバイトとかしてたもんな。 私が動くことで、少しだけスムーズにお客様の対応ができるようになった。 でも……。 もうすぐランチタイム。 一番忙しい時間になる。この状況、どうなるんだろ。 その時――。「すみません。遅くなりました」 私が食器を下げようとしていた時、後ろから話しかけられた。「えっ?亜蘭……佐伯さん?」 危うく下の名前で呼ぶところだった。 振り返るとベガの制服に身を包んだ亜蘭さんが立っていた。「本部の方じゃ調整が難しくて。事務仕事している人間が、いきなりカフェ店員ってみんな嫌がるんですよね。面倒なので、僕が来ました。よろしくお願いします」「あっ、はい。こちらこそよろしくお願いします」「僕は一応、オーダーとかレジもできますので。慣れてはいないんですが。九条さんは、今のような感じで対応してもらえれば助かります。すみません、急に。こんな仕事」 亜蘭さんって、ベガのフロアーもできるんだ。「わかりました。よろしくお願いします」 彼が入ってくれたおかげで、ランチタイムでもなんとかお客様にクレームを言われることなく乗り切れた。 それにしても彼の動き、すごいな。 何年もベガで働いている人みたい。 スッと動いてオーダー取っているし、ちゃんとお客様の前だからか愛想も良い。 仕事ができる人ってこんな人のことを言うんだろうな。 「九条さん、休憩してください。一度も休憩してないですよね。申し訳ないです」 お客様が落ち着き、平野さんがキッチンから出てきてくれ、
最終更新日 : 2025-10-17 続きを読む