今日の貴博の服装も、普段の堅苦しいものではなくラフなスタイルで、真琴と並んで歩く姿はとてもお似合いだった。車は滑らかに進み、車内での会話もすこぶる弾んだ。話題はもっぱら真琴の仕事のことだ。話の途中、真琴がうっかり二年前の出来事に触れると、貴博は目尻をいっそう下げて笑った。それはつまり、彼女が自分に対して一切の警戒心を解いている証拠だった。真琴は、自分を信頼してくれている。二十分ほどで川沿いの駐車場に車を停め、二人は肩を並べて水辺の遊歩道を歩き始めた。真琴が仕事の話をするのに熱心に耳を傾けながら、貴博は彼女の口から出る言葉のすべてが面白いと感じていた。その語る姿を見るのが好きだったし、何より、二人の間に壁を感じないことが嬉しかった。「博士、今日はなんだか機嫌がいいね」そう切り出し、貴博は尋ねた。「東央が東都に支社を出すらしいね」貴博の問いに、真琴は頷く。「ええ。この数年の東都市の発展は目覚ましいですから。こちらに拠点を置けば私たちにとっても大きな刺激になりますし、兄もすでに場所探しに動いていますよ」「その判断は正しいよ。東都は絶対に期待を裏切らない」真琴はふっと微笑む。「ええ、私もきっとそうなるって信じています」並んで歩調を合わせるうち、不意に二人の手の甲が軽く触れ合った。だが真琴は、あからさまに距離を取ることも、手を後ろに隠すこともしなかった。……その頃、バーでは。拓真たちの会話に上の空で相槌を打っていた信行だが、テーブルに置いたスマートフォンがブーッと震えて画面が明るくなった。祐斗からの着信だ。それを見た信行はスマートフォンを手に取り、人目につかない隅へ移動して電話に出た。通話が繋がるなり、祐斗の声が飛び込んでくる。「社長、西脇博士がまた五十嵐事務局長と出かけられました。お二人で川沿いを散歩されています」その報告を聞き、元から優れなかった信行の顔色はさらに黒く沈んだ。背を向け、ポケットからタバコとライターを取り出して火をつける。紫煙をゆっくりと吐き出しながら、スマートフォンを耳から離し、無言のまま冷たく通話を切った。茉琴はただの茉琴であり、真琴ではない。そう何度も自分に言い聞かせている。だが、どうしても湧き上がる感情を抑えきれず、気になって仕方がない
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