真琴がまともに取り合おうとしないのを見て、信行はふっと笑った。「提携プロジェクトの契約を二つも結んだばかりだし、今日の午前中のプロジェクトでは西脇博士が主要な技術責任者だったんだ。多かれ少なかれ、相談したい用件はあるに決まってるだろ」実際のところ、用件など何一つなかった。ただ真琴にちょっかいを出したくてやって来ただけなのだ。信行がもっともらしい口実を並べるので、真琴は両腕を胸の前で軽く組み、じっと彼を見上げた。こういう時の信行は、本当に呆れるほど面の皮が厚い。真琴がじっと睨みつけていると、信行は悠然と助手席のドアを開け、視線を落として言った。「博士、どうぞお乗りを」車には乗らず、真琴はただ彼を見据えて口を開いた。「信行、一体何がしたいの?」今回、彼女は「片桐社長」ではなく、彼の名前を呼び捨てにした。真琴の「信行」というその響きに、彼はひどく親しみを覚えていた。車のドアに片腕を乗せ、少し悪びれもせず笑って言う。「まだ夕飯を食べてないだろうと思ってね。食事にお誘いしたくて」そう言われても、真琴は腕を組んだまま、無言で彼を見つめ返した。その様子に、信行は右手を伸ばして真琴の頭をくしゃっと撫で、笑って言った。「ほら、そんなに警戒するなって。ただの普通の友達として、仕事の話をしたいだけだ。誰も恋愛しようだなんて言ってないだろ。それに、今のお前にそんな気がないことくらい分かってる」すべてを見透かしたような態度の信行に、真琴は尋ねた。「それを信じると思う?」信行は事もなげに言う。「信じる信じないはともかく、飯は食うだろ。まずは飯だ」さらに続ける。「それに、お前が首を縦に振らない限り、俺が一人で何をしようが骨折り損だ。だから、そんなに俺を警戒する必要はない」そう言われ、真琴は思いきり怒鳴りつけてやりたかった。これ以上まとわりつかないでと突き放してやりたかった。だが実のところ、今の彼女は本当に疲労と空腹のピークだった。午前中は発表会に出席し、午後は研究所に籠りきりで今までずっと働き詰めていたのだから。大げさでもなんでもなく、今この瞬間、目を開けていることすら辛いほどだ。じっと見つめてくる真琴の視線を受け止め、信行は右手の指先で彼女の頬を軽くこすり、少し痛ましそうな声で言
続きを読む