信行が口を開くより早く、克典は淡々とした声で遮った。「もし昔と同じことがまた起きるなら、2度と真琴をお前のもとへ戻す気はない」実の弟だからこそ、その性格は知り尽くしている。2度と真琴を裏切らせないよう、あらかじめ釘を刺しておいた。克典の警告に、信行は鼻先で笑ってみせた。「心配するなよ、兄さん。そんな隙は見せないさ」前回、海外から戻ったとき、克典は真琴に見返りなど求めず、ただ幸せでいてくれればいいと言っていた。そして今回帰ってくるなり、真琴を裏切るなと告げてくる。長年にわたり、克典は自分の思いを心の奥深くに沈めてきた。実はずっと真琴に惹かれていた。ただ彼女の気持ちを何より大切にしてきただけだ。勝ち誇ったような信行の態度にも、克典は表情を崩さなかった。「今日言った言葉を忘れるなよ。肝に銘じておけ」信行は軽く眉を跳ね上げた。「分かってる」絶対に譲る気はないという信行の様子を、克典は静かに見つめ、それ以上は何も言わなかった。そこへ、美雲が裏庭から姿を現した。2人が出入り口を塞いでいるのを見て、からっとした声を上げた。「2人して突っ立って何してるの?用がないなら裏庭へ行って、おじい様とおばあ様の話し相手でもしてきなさい。真琴ちゃんと紗友里を見習いなさいよ。あの子たちはいつだって気が利いて、お年寄りを喜ばせてくれてるわ」2人に軽く小言を並べ立てると、美雲は邪魔だとばかりに押しやり、台所へと向かっていった。美雲の後ろ姿を見送り、兄弟は互いに顔を見合わせた。揃って裏庭へ足を向け、祖父母の話し相手を務めた。一家揃っての団らんに、由紀夫も幸子も目を細めて顔をほころばせていた。とりわけ2人がよりを戻したと聞き、祖父母の喜びようは格別だった。*正午を回り、美雲が昼食の声をかけにやってくると、真琴と紗友里は老夫婦にそっと手を添えて母屋へと向かった。信行と克典がその後ろをついて歩いた。庭を抜けながら若い者たちの声に耳を傾け、幸子の顔からは笑みが絶えなかった。こうしていられるのが本当にありがたい、家族全員で顔を揃えられるのは本当にいいものだと、何度も繰り返していた。早くひ孫の顔を見せてほしい、そうなればもっと嬉しいのに、とまで声を弾ませた。幸子の言葉に、真琴は微笑むだけで何も言わな
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