翌朝、デイリー・ピープルの編集部は大混乱に陥っていた。 通信用水晶がひっきりなしに光っては、記者たちの怒号が飛び交っている。ミリーは、次々と舞い込んでくる被害報告の受付係として、その中心にいた。「ミリー! 南地区の染物工場の水車が止まった! 奇妙な海藻……いや、ヘドロのような群体がびっしり絡みついて、歯車が動かんそうだ!」「東の漁師たちからだ! 網を引き上げたら、魚じゃなくて、あの黒緑色のぬるぬるした群体でいっぱいだったと!」 ミリーはそれらの情報を必死に書きつけながら、昨日アレックスから聞いた推論を思い出した。『このプランクトンは、本来は水中で繁殖をする。水中であれば胞子を飛ばすことはないが……』『じゃあこれ以上、胞子に水分を奪われて死ぬ人は出ませんね?』『最後まで聞け。本来の生育環境である水中では、これらは爆発的に増えると予想される。これは特殊な形態であっても植物だからな。太陽の光が届かない深海と違って、地上近くではたっぷりと光合成ができる。どこまで増えるか予測は不可能だ』(増殖が始まってしまったんだわ。運河に捨てられたプランクトンが、群体になっている。今は水の中だから胞子は飛ばさないはず。でもこのまま増え続けたら、どうなるかわからない!) そうしているうちにも、群体となったプランクトンの被害報告は届き続けている。 ミリーは市民生活が脅かされているのを目の当たりにして、強い焦りと使命感を感じた。「すみません! 情報係、誰か変わってください。私、アレックスさんの様子を見てきます!」「わかった、俺がやるよ。こうなったらあの人の知恵が頼りだ」 同僚のレオが手を上げてくれたので、ミリーは礼を言って交代した。「気を付けて行ってこいよ!」「はいっ!」 先輩記者のマードックと編集長の声を背中に受けて、ミリーは走り出した。◇ ミリーが時計塔に駆け込むと、アレックスは今まさに出かけようとしていたところだった。「どこへ行くんです
Terakhir Diperbarui : 2025-09-10 Baca selengkapnya