右斜め後ろにある彼の唇から吐息が漏れるたび、詩織の耳の先端をくすぐるように熱が当たる。またしても、耳が恐ろしいほど熱くなってきた。鼓動がうるさいほどに早鐘を打つ。もし彼が上から手を添えてくれていなければ、手が震えて絶対にケーキを真っ二つに切り損ねていただろう。「味見してみてくれ。お前が作った味と同じになっているか」柊也がフォークでひとすくいしたケーキを、詩織の口元へ運ぶ。詩織は少しだけ舌を出し、控えめにクリームを口に含んだ。その何気ない仕草を至近距離で見てしまった柊也の喉仏が、ゴクリと大きく上下に動く。瞳の色が、一瞬にして深い夜の闇よりも濃く濁った。無意識のうちにフォークの冷たい柄を指の腹で強く擦りながら、ひどく掠れた声で問う。「……どうだ?」詩織は背後の彼の変化にまったく気づかず、ペロリと唇の端を舐めた。「うーん、よく分からないわ。ひと口が小さすぎたのかも。もうひと口ちょうだい」突然、柊也がさらに身を屈めて顔を近づけてきた。息がかかるほどの至近距離で、詩織の唇の端にちょこんとついたクリームを指の腹で微かに拭う。その瞳の奥には、詩織には読み切れない熱い感情が渦巻いていた。「なら、別の方法で食わせてやる。そうすれば思い出すだろ」お互いにしか聞こえないような低く掠れた声でそう囁くと、彼はフォークをテーブルにコトリと置いた。代わりに長い指を伸ばし、ケーキの端から白いクリームをひと掬いする。そして、詩織が事態を呑み込むより早く、そのクリームを自分の口へと運んだ。次の瞬間、柊也は詩織に覆い被さるように身を乗り出した。指先で強制的に彼女の顎を上向かせ、そのまま深く唇を塞ぐ。甘い口付けが、舌の上で弾けた。それはさきほどの車の中のような柔らかい感触ではなく、逃げ場を塞ぐような、ひどく侵略的な「給餌」だった。彼はすぐに離れようとはせず、唇を執拗に押し当てたまま、先ほどのクリームを少しずつ詩織の口内へと流し込んでくる。熱い舌先が上顎をなぞった瞬間、詩織の背筋にゾクッと痺れが走り、たまらず身をよじって逃げようとした。だが、うなじをがっちりとホールドされたまま、さらに強く引き寄せられてしまう。ケーキの甘さと、彼から香るミントの涼やかさ。そして、すべてを焼き尽くしそうなほど熱を帯びた彼の荒い吐息。それらが
Read more