一方、詩織は智也を支えながら、道端で十分近く待って、ようやくタクシーを捕まえることができた。冷たい夜風に吹かれて、智也は少し酔いが醒めたらしい。彼はひどく申し訳なさそうにしている。詩織の力になるどころか、逆に面倒をかけてしまった、と。「これからの会食では、お酒は私が飲むから大丈夫。私の代わりに飲んだりしなくていいのよ。ちゃんと自分で対処できるから」詩織は彼にそう言った。「私がお酒に弱いのはわかってる。でも……それでも君の代わりに飲みたかったんだ。一杯でも私が飲めば、君が飲む分が一杯減るんだって……」その言葉が、深水市の厳しい寒さをふっと和らげてくれた気がした。詩織は、それ以上何も言わなかった。しばらく沈黙が流れた後、智也がとても慎重な口調で尋ねた。「……大丈夫?」詩織は何のことかわからず、首を傾げる。自分は、そんなに大丈夫そうに見えないのだろうか。「さっき、車が通り過ぎた時……賀来社長が見えたんだ。君の目の前で、車の窓を閉めて……」智也は、言葉を選びながら、たどたどしく言った。詩織は、彼に言われるまでそんなこと忘れていた、というような顔をする。「平気よ。もう、何とも思わないから」それは、彼女の本心だった。智也が信じようと信じまいと。「それに、この世の中、誰かが誰かとずっと一緒にいられるわけじゃないし、誰かがいないと生きていけないなんてこともないでしょう。誰がいなくなったって、地球は回り続けるんだから」……翌朝、早くから志帆の部屋のドアがノックされた。てっきり柊也だと思って、志帆は弾む心でドアを開けた。しかし、そこに立っていたのは、柊也ではなく太一だった。「ジャジャーン!驚いた?まさかの俺でしたー!」太一はまだスーツケースを引いている。どうやら深水市に着いたばかりのようだ。「どうしてここに?」志帆は目を丸くした。「もちろん、志帆様からビジネスを学ぶためっすよ!」太一はきょろきょろと彼女の後ろに視線を送り、尋ねた。「あれ、柊也は?まだ寝てる?」「ええ」「うわっ!俺、もしかしてお邪魔虫だった!?」太一は今気づいた、とでも言うようにポンと自分の額を叩いた。「じゃあ、先にレストランで待ってる!二人はゆっくり準備して。急がなくていいから!俺のことは気にしないで!」そう言うが早いか、足
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