プロトタイプを試した京介は、驚きに目を見張った。「これが、ただの初期モデルだって?……詩織、君はとんでもない逸材を見つけてきたな」「まだ事前学習の段階だから、実際の製品が持つポテンシャルの、ほんの触りにもならないわ」「これでもう、十分すぎるほどだ」試せば試すほど、京介の表情は満足の色に染まっていく。「詩織。俺は、君のプロジェクトに投資する」その言葉は、詩織にとって意外なものではなかった。この製品には、それだけの価値があると確信していたからだ。それでも、彼女は冷静に尋ねた。「……宇田川社長は、おいくらご出資いただけますか?」「まずは、10億円。その後の進捗を見て、追加を検討しよう」自信はあったとはいえ、京介が提示した金額に、詩織は息を呑んだ。「……ありがとうございます、宇田川社長!」詩織はすっと立ち上がり、京介に手を差し出した。彼は、その手を力強く握り返す。「互いにとって、実りのある提携にしよう。すぐに契約書をまとめてくれ。いつでも資金を振り込めるようにしておく」「わかったわ!」詩織は、ためらわずに頷いた。彼女はこの資金を、一刻も早く次の量的トレーニングに投入したかったのだ。二人が談笑していると、京介のオフィスに新たな来客があった。宇田川太一だ。しかも一人ではない。隣には、志帆が寄り添っていた。詩織はふと眉を上げ、無意識のうちに二人の背後へと視線を走らせる。柊也がいるかもしれない、と思ったからだ。何しろ、あの二人はいつもセットで行動している。しかし意外なことに、今回、彼の姿はなかった。「京介」志帆は満面の笑みでオフィスへ入ってきたが、詩織の姿を認めた瞬間、その表情が一瞬強張った。だが、彼女はすぐに平静を取り繕う。詩織の存在を意図的に無視し、京介にだけ意識を向けて話しかけた。「仕事の邪魔じゃなかったかしら?」「いや、大丈夫だ」一方、隣にいた太一は、そこまで感情を隠せる男ではなかった。詩織を見るなり、あからさまに顔をしかめる。敵意を剥き出しにした声で、喧嘩を売るような口調だ。「なんでどこにでもいんだよ、お前」詩織は少しも臆することなく、同じ言葉を返した。「本当に。どうしてどこにでもいらっしゃるんでしょうね」その口調はあくまで穏やかで、攻撃的な響きは一切ない。だが、その言
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