ミキはますます面白がって身を乗り出す。「あら、当の本人のクズ也は喜んでゴミを漁ってるのに、話を聞くだけであんたは食欲なくすの?」「もう、やめてってば!」詩織が本気で箸を置きそうになったので、ミキは慌てて両手を上げた。「はいはい、降参。まあとにかく、あのお坊ちゃんにはしばらくご立派な『ツノ』を生やしたままでいてもらいましょ」それには詩織も同感だった。食事が終わった頃、詩織が手配していたデリバリーが届いた。海雲の好物である老舗菓子店の銘菓だ。病室の一件で海雲には助けられた。きちんとお礼をしておくべきだろう。ノックをして病室に入ると、そこには意外な人物――柊也の姿もあった。詩織に気づいた彼は、わずかに体を向け、静かな瞳でこちらを一瞥した。相変わらず、何の感情も読み取れない冷ややかな視線だった。詩織は手土産を松本さんに手渡した。挨拶だけして早々に立ち去るつもりだったが、海雲に呼び止められ、証券会社の話になった。『ココロ』の上場にあたり、詩織もいくつかの証券会社と接触し、主幹事選びを進めていたが、どの提案も今ひとつ決め手に欠けていたのだ。「私の方でも二社ほど、見繕っておいたのだがね」海雲はそう言って、前もって用意していた資料を詩織に差し出した。受け取って中身を確認した詩織は、息を呑んだ。そこにあったのは、国内トップクラスの証券会社の名前だったからだ。通常、『ココロ』のような新興プロジェクトの規模では、このクラスの大手と組むのは時期尚早とされる。彼らの顧客は、数兆円規模の大企業ばかりなのだ。詩織もハナから高嶺の花だと諦めていた相手だった。海雲は詩織の戸惑いを察し、力強く告げた。「私が推薦人になれば、先方も無下にはすまい」詩織の胸に熱いものがこみ上げる。起業の道は決して平坦ではない。だが幸運なことに、詩織の周りにはこうして手を差し伸べてくれる有力者が多く、そのおかげで困難な道も切り開くことができた。「俺は『中森証券』の方が『ココロ』向きだと思うけどな」それまで黙っていた柊也が、ふいに会話に加わってきた。「あそこはこの手の案件に実績がある。前にS市の『合和テクノロジー』の上場を主導した時も、受理から承認までわずか八十八日というスピード記録を叩き出してる」実は詩織も、心の中では『中森』に傾
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