病室の中では、璃々子が目を真っ赤にして泣き腫らしていた。白彦の姿を見るなり、「白彦兄さん……」と縋るように呼びかけ、あとは声を詰まらせて泣きじゃくるばかりだ。白彦は適当に二、三言なだめると、後から入ってきた警察官に状況を確認した。一通り説明を受けた後、白彦は言った。「この件は、当事者間で示談にしたいと思います」女性警察官が冷ややかな、軽蔑の混じった視線を彼に向ける。男性警察官は事務的に答えた。「こういったトラブルは、当事者同士で解決できるに越したことはありません。そこまで大きな事件というわけでもないですからね」「まずは我々で話し合います。ご足労をおかけしました」警察官たちを送り出した後、白彦は細く深い漆黒の瞳で璃々子を見据えた。その声は、ひどく冷め切っていた。「――それで? 手の怪我は自分でやったのか?」璃々子は赤く腫れた目で彼を直視できず、顔を伏せた。「……あの時は、頭に血が上ってて……ミキさんが先に私を侮辱したから……」白彦はじっと彼女を見つめたまま、感情の読めない低い声で告げた。「分かった。この件は俺が処理する。お前はしっかり傷を治せ」少し間を置いて、彼は付け加えた。「もう泣くな。目に悪いぞ」......白彦が病室に戻ると、サワはすでに目を覚ましていて、ミキと楽しそうに談笑していた。ミキは年寄りの扱いが上手く、部屋からは時折サワの笑い声が漏れ聞こえてくる。ドアの外にいた石田が、戻ってきた白彦を引き止め、声を潜めて言った。「せっかくサワ様がご機嫌なんですから、今は入らないでください。もう少しミキさんと二人きりにして差し上げましょう」白彦は足を止め、石田の言う通りに廊下の椅子に腰を下ろした。病室の中では、サワが病院は退屈だから帰りたいとごねていた。ミキが優しくなだめる。「明日の検査結果が出たら帰れますから。それに、家に帰っても一人になっちゃうでしょ? 私とおしゃべりできないなんて、つまらないじゃないですか」「なら、ミキちゃんも一緒にうちへ帰ればいいさね」「それはダメですよ。今は白彦からの最後の手続き待ちなんですから。あの家に行けば彼とも顔を合わせるでしょうし、それはあまりにも気まずいですからね」サワは腹立たしそうに鼻を鳴らした。「後で、あんたの弁護士さんに聞いてくれないか?私の後見人の
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