三人が北の山々から戻ると、爺様たちをはじめとする、住民たちが待ち構えていた。皆一様に健康そうでハツラツとしていて、見るからに禍の病から快癒したことが窺える。 夕暮れに屋敷に辿り着いたのだが、入り口一帯を昼のように明るい灯りで出迎えてくれたのだ。この国でこんなに明るい灯かりをつけられるのは、妖力によるものであろう。その事からも、ほとんどの患者が完治しつつあるのだろうと言える。「よぅお戻りになられた! ご無事で何よりでございます!」「あの、皆さんはもう禍の病は……」 出迎えてくれた爺様に楓が確かめる意味で尋ねると、爺様は喜びに目元を潤ませて大きくうなずき、楓の手を取り答える。「神子様のお陰で、皆数日前より徐々に妖力を取り戻しつつあります。井戸の水の濁りも、一切なくなりましたゆえ、きっと、神子様たちが魔獣を退治して下さったのだと……」「あの、その事なんですけど……」 涙を流して喜んでいる爺様の気持ちに水を差すような気がして、ためらってしまうが、それでも事実は伝えておかねばらないだろう。松葉と常盤を窺うと、二人もうなずいている。「瘴気の原因になっていたのは、暮夜でした」「なんと……あの暮夜を退治されたと言うのですか、神子様!」 楓の言葉に、爺様やその御付きの周囲の者たちがどよめき、期待のこもった目を向けてくる。この世界でも最大級と言える魔獣が原因で、それによる病が消えたとなれば、きっと退治してくれたに違いない。そんな期待に溢れる視線に対し、楓は困ったようにうつむき、本当のことを告げた。「いえ……僕は、暮夜を退治はしていません」 楓の言葉に、周囲は驚き、騒めく。先程までの喜びに満ちた雰囲気が一気に冷めて鎮まっていく。「なんですと?! で、では皆の禍の病は治っておるのは、なにゆえ……」「暮夜が瘴気を放っていたのには、理由があるんです」「理由?」 大勢の問うてくる視線を受け、楓は怯みそうになりながらも、傍に付き添ってくれている松葉と常盤の存在を支えに、北の山で起こった出来事を簡潔に語り始めた。「暮夜が瘴気
Last Updated : 2025-10-13 Read more