高司ははっきりと「出て行け」と言ったのに、私の足は鉛のように重く、どうしても動かなかった。だって分かっていたから。この扉を出た瞬間、沙耶香は桐生家によってロリコンの変態男に差し出されてしまう。そうなれば、彼女の一生は終わりだ。目の奥と鼻がつんと痛み、必死に涙をこらえながら、震える指で一つ、また一つ……ニットのボタンを外していく。絶望と無力感に押し潰され、息が詰まりそうだった。高司の視線が熱を帯びる。深い黒い瞳の奥で、複雑な感情が渦巻き、喉仏が無意識に上下した。彼はただじっと私を見つめ、視線を一瞬も逸らさなかった。オフィスは暖房が効いているはずなのに、私は寒さで震えている。ニットが肩から滑り落ち、中に着ていた薄手のトップスもゆっくり脱いでいく。上半身に下着だけが残ったそのとき、高司が突然立ち上がり、こちらへ歩いてきた。怖くなって、思わず目をぎゅっと閉じる。体の震えが止まらない。けれど、予想していた触れられる感覚は来なかった。彼はわずかに身をかがめ、温かな吐息が耳元をかすめる。だが、その言葉は氷のように冷たかった。「どうして俺が、既婚者に手を出すと思った?昭乃、自分を買いかぶりすぎだし、俺を見くびりすぎだ」その一言は、強烈な平手打ちのように私の頬を打った。私ははっと目を開き、顔が一気に熱くなる。恥ずかしさが足元から一気にこみ上げてきて、今すぐどこかに逃げ込みたくなった。慌てて背を向け、背中に手を回してブラのホックを留めようとする。けれど手が震えて、どうしても留まらない。焦れば焦るほど、うまくいかない。そのとき、高司がゆっくりと私の後ろに回り、私の乱れた手をそっと取った。指先が背中の肌をかすめ、その瞬間、体がびくっと震える。私はその場に固まって、息をするのも忘れてしまった。彼の動きはとても優しく、あっという間にホックを留めてくれた。終始、ひと言も発さないまま。留め終えると、彼はそのままデスクへ戻り、書類を手に取って何事もなかったかのようにサインを始めた。まるで今の一切が存在しなかったかのように、半裸同然の私など最初からそこにいないものとして扱われていた。私は慌てて床に落ちた服を拾い、必死で身につける。着終えても、彼を見ることができず、声もかけられないまま、うつむいてドアへ向かった。ドア
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