前に監視カメラが壊されたのは、時間をかけすぎたせい。しかし今日は詩恩が来てすぐ帰ったばかりだから、痕跡はまだ残っているはず。電話に出た瞬間、時生の冷たい声が響いた。「毎日のように離婚したがってたのに、いざ今日になったら来ないってどういうつもり?」私は一言ずつはっきりと言った。「行かなかったのは、詩恩が来たから。お母さんの病室に長いこといたの。何をしに来たのか、分からなくて」電話の向こうが一瞬で静まり返る。聞こえるのは時生の重たい呼吸だけ。しばらくして、ようやく口を開いたその声には、信じられないという怒りが滲んでいた。「昭乃、詩恩はもういないんだ!なんでまだ彼女を言い訳にして嘘つくんだ?」「嘘じゃないよ」私は落ち着いて言った。「監視カメラの映像がある。今すぐお母さんの病室に来て。見せるから」「今から行く。もし嘘だったら、ただじゃ済まさないからな」時生の声は刺すように鋭く、そのまま電話は切れた。スマホをしまおうとしたそのとき、また着信音がけたたましく鳴る。画面には見知らぬ番号が表示されていた。胸がざわつき、反射的に通話ボタンを押した。電話口から聞こえてきたのは、冷たい若い女の声。「ずっと私を探してたんでしょ。そう、私はまだ生きてる」「詩恩?」私は思わず立ち上がり、声が震えるのも構わず問い詰めた。「どこにいるの?」「あなたの車のナンバー、潮見あ60-03でしょ?」彼女は答えず、私の車のナンバーを口にした。「病院の駐車場にいる。あなたの知りたいこと、今ここで全部答えてあげる」心臓が激しく打つ。とにかく今すぐ真実を知りたい。「分かった、今行く」エレベーターに乗り込み、地下階のボタンを何度も押す。すぐに車庫へ到着した。一歩踏み出した、その瞬間、背後から手が伸びてきて、いきなり口と鼻を塞がれた。もう一方の手で、監視カメラの死角へと引きずられる。全身の力が一気に抜けていく。視界がぐにゃりと歪み始める。数秒もしないうちに、目の前は完全な闇に飲み込まれた。……黒澤家の邸宅。夕方、時生のもとに紗奈から電話がかかってきた。「昭乃は?どこにやったの?」繋がるなり、紗奈が焦った声で問い詰める。時生はうんざりしたように眉をひそめた。「紗奈、それはこっちが聞きたい。昭乃は今日いったい何してたんだ?」
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