そのせいで今の時生は、何から償えばいいのかさえ分からなくなっていた。……屋敷の暖かな灯りが雨の帳を遮っている。私は玄関の方を見つめながら、不安な気持ちを抱えていた。心菜はもう時生について行ってしまっただろうか。子育てって、実はペットを育てるのと少し似ている。長くそばにいてくれた人、温もりをくれた人に、子どもは本能的に懐くものだ。時生には深く傷つけられた。それでも、心菜を可愛がっていたことだけは紛れもない事実だった。もし心菜が本当に彼について行くことを選んだとしても、私は何を責められるだろう。そんなことを考えていると、玄関の方から「カチャッ」と小さな音が聞こえた。私ははっと顔を上げた。すると、そこには心菜が立っていた。手にした傘からはまだ雨粒がぽたぽたと落ちている。髪にも頬にも水滴がついていた。その姿を見た瞬間、張りつめていた心が一気にほどけた。私はすぐに立ち上がり、迎えに行った。高司は振り返り、ウォークインクローゼットから乾いたタオルを持ってきた。差し出されたタオルを受け取るとき、不意に彼の指先が私の手の甲に触れた。そこにはかすかな温もりがあった。私はタオルを受け取り、しゃがみ込んで、心菜の頬や髪の先についた雨粒を丁寧に拭いた。心菜はうつむいたまま、小さな手で服の裾をぎゅっといじっている。しばらくしてから、ようやく黒く澄んだ瞳を上げ、小声で言った。「ママ、私、パパを帰らせたの。さっき会いに行ったんだけど……怒ってる?」私は胸がきゅっとなり、頭を優しく撫でた。鼻の奥が少しツンとする。「おバカさん。ママが怒るわけないでしょ」その言葉を聞いた途端、心菜の強張っていた肩がふっと緩んだ。そして、ほっとしたような笑顔を見せた。心菜は無意識にポケットへ手を入れ、何かを取り出そうとした。けれど途中でぴたりと動きを止めると、慌てて手を引っ込め、代わりに私の服の裾を引っ張った。「ママ、誕生日のケーキ食べたい」隣で見ていた澄江が、優しく心菜の髪を撫でながら言った。「ちゃんと取ってあるわよ。心菜が帰ってくるのを待ってたの。いちばん大きなお花のところを残しておいたのよ。ピンク色のお花なの」そう言うと、心菜の手を引いてダイニングの方へ向かった。心菜はケーキを受け取り、甘えた声で言った。「ひいおば
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