Todos os capítulos de 選んだのは、壊れるほどの愛~それでも、あなたを選ぶ: Capítulo 61 - Capítulo 62

62 Capítulos

61.もう隠さない

蓮の部屋の窓辺に、午前の光が静かに差し込み始めていた。カーテン越しの光は、優しくも確かに夜が終わったことを告げている。ベッドのシーツは少し乱れ、昨夜の熱と眠気の名残がまだそこに漂っていた。蓮はキッチンでコップ一杯の水を飲み干し、深く呼吸を吐いた。背後では、瑛司が静かにシャツのボタンを留めていた。泊まったとはいえ、彼は今日も仕事へ向かう。まだ離れた場所にある日常へ。ふたりの間に、焦るような気配はなかった。代わりに、昨夜抱きしめ合ったときと同じ温度が、まだどこかに残っていた。皮膚の表面ではなく、もっと深い場所に。蓮は背中越しにその気配を感じながら、振り向かずに尋ねた。「ホテル、戻るの?」「うん。今日はちょっと資料の整理がある」「ああ、そっか」ほんの数日前までは、こうして何気なく言葉を交わすことすら、怖くて仕方がなかった。言葉の向こう側に何かが潜んでいる気がして、目を合わせるのも避けていた。だけど今は、ふとした言葉の間が、ただの“呼吸の間”に変わっている。シャツの袖を整えた瑛司が、荷物をひとまとめにして立ち上がる。蓮の部屋の玄関は、出入りするには少し窮屈な間取りだったが、今は妙に居心地がいい。ふたりが近づくには、ちょうどいい狭さだった。「行くね」瑛司がドアノブに手をかける。その声に、蓮がゆっくりと振り返った。靴を履こうとする瑛司の背中を見ながら、蓮は言葉を探した。何か、ただの「いってらっしゃい」じゃない、確かな言葉を。けれど、その先に出たのは、瑛司の方だった。「これからは」靴を履いたまま、彼は背中越しに言った。「もう、嘘はつかない。何があっても」蓮は思わず息を呑んだ。その言葉は、優しさよりも重かった。誓いのようで、赦しのようでもあった。瑛司が振り返る。目が合う。その視線に、もう逃げ場
last updateÚltima atualização : 2025-09-30
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62.再び、仕事の顔

都内某所、ガラス張りの高層ビルの中層階。午前十時を回ったばかりの会議室には、緊張とも期待ともつかない空気が漂っていた。壁際のモニターに映し出された資料には、来月から始動する新プロジェクトのロゴ。長方形のテーブルには五人が着席しており、そのうちの二人──瑛司と蓮──は、互いの対角線上に座っていた。形式ばった自己紹介や名刺交換がひととおり済み、企画責任者の進行に合わせて会議は粛々と進行していた。ペンの走る音、キーボードのタイピング音、スライドをめくるリモコンの微かなクリック。全員が仕事の顔をしている。もちろん、瑛司も、蓮も。けれど、ふとした瞬間。誰かの発言に応じて視線を巡らせた蓮と、資料のページをめくりながら周囲を見渡していた瑛司の目が、会議卓の上で交錯した。その一瞬だけ、時間がゆるやかに揺れる。蓮は、表情を変えないまま視線をほんの一秒だけ留めた。以前ならすぐ逸らしていた。けれど今は、少しだけ“残す”ことができる。それは主張ではなく、共有だった。静かな、だが確かな合図。瑛司もまた、無言のまま小さく頷き返した。唇は動かさず、目だけで、ひとことを伝えてくるように──「大丈夫だ」「ここでも、おまえの味方でいる」その仕草を知っているのは、きっと蓮だけだ。会議室の他のメンバーは、誰も気づいていない。でも、それでよかった。もう隠す必要はないが、見せびらかす必要もない。二人の関係は、“誰にも知られない”ことよりも、“自分たちが知っている”ことの方が重要だった。「…以上が、ビジュアル案の第一案です。全体の世界観に対して、ご意見いただければと」進行を担当するクリエイティブディレクターの声に、蓮が自然に応じた。「色味と構図は概ね問題ないと思います。ただ、ブランド側の要望としては、もう少し余白のニュアンスを大事にしたいとのことだったので──」淡々と説明する
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