美咲は元同僚から、あの男について話を聞くため、カフェに向かった。 カフェの一角で美咲を待っていたのは松田だ。彼は石場と同じ部署で働いていたことがある。彼なら何か知っているのではないかと思い、連絡を取った。 松田は美咲を見るなり、穏やかな笑みを浮かべた。「久しぶりだね、美咲さん。元気そうで何より」「お久しぶりです、松田さん。あれっ、もう一人の方は?」「少し遅れるってさ。で、今日はどうしたの、突然、石場のことを訊きたいとか言ってさ。石場って、あの石場でしょ。どうして、あんな奴のことを知りたいわけ?」 あの男は石場というのか。「実は、その人がエミリアの失踪に関与しているのではないかと疑っていて……。知らべてみると、かなり怪しいんですよね」 美咲が、これまでの経緯を簡潔に説明すると、松田は深く頷いた。「疑いたくなる気持ちは良く分かるよ。あいつは確かに変だったからね。営業先にも散々、迷惑をかけてたし……。突然、その場から居なくなって、全く別の場所で見つかるとかさ。普通、有り得る? 有り得ないでしょ? しかも、そんな状況でも、あいつは平然としていたからね。持ち場を離れて遊んでいてもバレないと思ったんだろうけどさ。舐めてるよね。あいつは基本的に自分のことしか考えていない。他人の功績を自分のものにすることもよくあったし、嘘ばかりつくし。だから成長しないんだよ。新人でも知っている仕事内容なのに、あいつは知らなかった。実際にやってもできなかったからね。とにかく卑怯。どうにもならないよ」 松田の石場への怒りがひしひしと伝わってくる。「そんな人が同じ部署に居たら迷惑ですね。退職者が相次ぐのも仕方がないと思う」 石場が原因で何人もの人が退職したと聞いている。「仕事ができないのは別に構わないんだよ。みんなが退職したのはそれが理由じゃない。あいつはすぐに感情的になって、他人を攻撃するところがあった。他人に対して高圧的に振る舞って偉そうにしていたからね。特に女性に対しては本当に酷い態度を取ってた。上司が居る時と居ない時とでは態度が全然違っていた」 立場の弱い人に対して高圧的に振る舞うか……。自分に自信のない証拠だと思う。本当に実力があるのなら堂々としていられる。「それは確かに一緒に働くのは難しいですね」「あいつは自分の過ちを認めることは決してなかった。常に無反省で
Last Updated : 2025-10-01 Read more