「お前のおかげで妻との関係が改善したよ。ありがとうな」小声で言ってきたその顔は以前よりも少し柔らかくなっている。「良かったわね。これからも奥さんのこと大切にして!もう二度と合コンなんか行くんじゃないわよ」私がそう言うと佐藤は「もう行かないよ」と苦笑してから、笑顔で顔の前で手を振ったので、私も胸の前で小さく振り返した。 そのまま会場の外に出て、トイレに行くために受付を通り過ぎたが、佳奈の姿はない。(べ、別にあの人に会いたかったわけじゃないんだから。私には関係ないし!)そう思い、歩いているとちょうど入れ違いでトイレの角から佳奈が出てきた。「あっ―――――」お互い気がつき、小さく声を漏らす。私たちは静かに見つめ合っていた。「結婚したんですね。おめでとうございます。」数秒の沈黙の後、向こうから声を掛けてきた。知人に話しかけるような穏やかな声だが、瞳の奥には複雑な感情が渦巻いているのが分かった。私は平静を装って言葉を選ぶ。「ええ。おかげさまで。あなたも啓介と結婚したの
Last Updated : 2025-09-30 Read more