All Chapters of 誰が悪女だから幸せになれないって?〜契約結婚でスパダリを溺愛してみせる〜: Chapter 31 - Chapter 40

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33.密室のエレベーターと見つめ合うふたり

パーティーも終焉を迎え、再び律の隣に並んでいた時のことだった。「本日はお集まり頂きましてありがとうございます――――」締めの挨拶が終わり会場を後にしようとすると、律が取引先に話しかけられ、仕事の話を始めてしまった。混み合った話になりそうだと判断した私は、アイコンタクトをして先に会場を出て、エントランスで律が出てくるのを待った。受付は既に片付けられており、人の姿はもう誰もいない。(さっきのお礼、言いそびれちゃった。あと、あの時のお詫びも……)時間が経ってから、啓介と佳奈にしたことへの罪悪感が生まれてきていた。だからと言って、自分から謝りに行くこともできず、もう姿を見せないことが一番だと言い聞かせていた。しかし、今日再会して私を助けてくれたことで、過去の自分のしたことへの罪悪感がより一層大きくなっている。ぞろぞろと人が出てくると、その中に佐藤の姿もあった。佐藤は小さく手をあげて目配せしてから笑顔で去っていく。私も佐藤にアイコンタクトを送り、小さく胸の前で手を振っていた、その時だった―――――背後から律が私に近づき、私が振っていた手を強い力で掴み、そのまま強引に引っ張って歩いていく。「え、ちょっと、何よ!」
last updateLast Updated : 2025-10-01
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35.運命と悪戯が交錯する再会

「蓮見社長?本日はありがとうございました」律と目が合った佳奈はすぐに椅子から降りて、その場で頭を下げた。律は一瞬、眉間に皺を寄せかけたが、すぐにビジネスの顔に戻した。「ああ、坂本さん。旦那さんですか?今はプライベートでしょうから、お気になさらず楽しんでください」「ありがとうございます」「初めまして。高柳です。妻がいつもお世話になっています」啓介も椅子から降りて、律に丁寧に挨拶をしたが、その瞬間、律の表情が曇り、心臓を鷲掴みにされたかのような苦い表情をし、小さな声で啓介の苗字を復唱した。「高柳……?」「え、あ、はい。啓介、高柳啓介です」「そうですか。坂本さんには、いつも、こちらがお世話になっています。これからもよろしくお願いします」いつもの営業用の笑顔で律は爽やかに挨拶を終え、佳奈たちに背を向け、部屋へと向かっていった。数メートル離れて私が律の後を追うと、啓介が私のことに気がついたようで、驚いた顔をしてから、小さな声で『凛』と呟いていたが私は反応せずに律を追った。部屋に入ると、律は口元を手で覆い隠したまま、壁を向いて何か考え事をしているようだった。
last updateLast Updated : 2025-10-03
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36.律へのアタック開始

「あ、またフォロワー増えている!DMも増えて来たっ」最初は喜んでいた商品の紹介案件も、最近では来るのが当たり前になり、自分のコンセプトとずれないように、受ける案件を選ぶまでになっている。ハイブランドの本物と似ている商品の比較が一番反応がいい。その中に、テーブルコーディネートしたおもてなし料理の写真、日々のファッションなどを投稿し、悠々自適な生活を送っている感じの写真を投稿すると、コメントでも「PRや商品購入だけが目的じゃない印象が素敵です」と書かれており、私の戦略は狙い通りだった。この日、オーストラリア産の本革を使ったバッグを片手に、いろんな角度から写真を撮り、どれを投稿用にするか選んでいる時だった。ふと、先日のパーティーの夜を思い出す。(Yシャツのシミは誤解だ、って言っていたけど、結局、理由は分からないままだったな。あの時、なんて言おうとしたんだろう。それにしても、私を一人残して急に帰るって何よ?)律のことは、思い出すたびに腹が立つ。人前では社交的で礼儀正しい若手経営者の顔をしておきながら、私には俺様で偉そうな態度ばかり。気まぐれに振り回し、勝手に誤解して怒る。「私だってお飾り妻じゃなくて、少しは距離が縮まったらと思って動いているのに、夕食に誘ったら他の男がいると疑われるし、律さんの部屋に行ったらグロスの痕がべったりついたシャツを見つけるし……。他の異性がいるのは、そっちじゃない!」
last updateLast Updated : 2025-10-03
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37.漏れる笑みと秘書の小森

律side「あれ、専務?何かいいことあったんですか?口が綻んでいますよ」「いや、何でもない」俺は、秘書の小森の指摘に思わず口元を押さえてから、凛からのメッセージを再び見返す。『今週の土曜日に食事しない?この前の帆立とかで料理作るね。返事待っています!』小柄で小動物のような守ってあげたくなるような可愛らしい見た目とは裏腹に、凛は気の強くプライドの高い女だった。契約結婚だと言うのに、俺に容赦なく歯向かってくるし、誰もがすぐに飛びつくはずの好条件だったこの契約も、品定めされるのは嫌だと最初は断ってくるほどで、俺は断られるなんて予想もしておらず、あの時は呆然としていた。そんな凛が、『食べたいものを作る』なんて甲斐甲斐しいことを言ってきた。今まで、凛からは、所詮自分の心の穴を埋めるためだけに過ぎなかった。俺にリクエストも聞いてきたことで、自然と口角は上がっていた。「小森、確かワインに詳しかったよな。魚介に合うワインを探しているんだが、2本ほど用意してくれないか」「かしこまりました。辛口と甘口、どちらがいいですか」「相手の好みを知らなくてな。1本ずつ選んでくれるか」
last updateLast Updated : 2025-10-04
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