「よし、投稿完了!」新しく買ったばかりのランチョンマットの上に、ゴールドが光り輝くカトラリーを並べる。花瓶には、鮮やかで大ぶりなダリアの花を挿した。自分で作った料理を新調したお皿に盛りつけ、テーブルコーディネートを施し、一枚の写真に収める。そして新しいSNSアカウントにそれをアップロードした。結婚して、平日の昼間に自由に会える友人はほとんどいないため、せっかく高級サロンで髪やネイルを整えても、誰も気づいてくれない。その寂しさが胸の奥でチクチクと刺さっていた。(律さんが相手をしてくれないなら、興味を持ってくれる人に発信するまでだわ。)私は、顔や素性は明かさず都内在住の「セレブ妻」として日々の生活を投稿することにした。結婚前は、ハイブランド風に見えるとネットで噂される物を探しては安く手に入れていたが、今は違う。本物を買うことができる。買い物をしている時と、SNSに「素敵ですね」と反応があった時だけは、少しだけ優越感に浸っていられた。今まで愛用していた本物に似ているといわれていた品も、実際に比較すると、鞄なら革の厚みやステッチの細かさなど見た瞬間にその違いは歴然だった。アクセサリーも同じで、光の輝き方や石の大きさ、透明度が全く異なる。
Terakhir Diperbarui : 2025-09-20 Baca selengkapnya