All Chapters of 誰が悪女だから幸せになれないって?〜契約結婚でスパダリを溺愛してみせる〜: Chapter 81 - Chapter 90

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81. 作られた笑顔の戦場①

「凜ちゃん、久しぶりね」「香澄さんー、お久しぶりです」幹部だけの会議が終わり懇親会場へ向かうと、律と香澄さんが話をしていたが、律より先に香澄さんが気づいてくれて声を掛けてくれた。「今日も素敵なドレスね。可愛くて凜ちゃんの雰囲気にぴったり。ね、律?」「あ、ああ」律の素っ気ない態度を横目に、私は今日の参加者たちを見渡した。(あの青いネクタイの人が圭吾さんね。この中で一番年上だから、自分がトップの地位につきたいと隼人さんをライバル視していると聞いたわ。そしてその手前にいるパンツスーツの女性が円華さん。彼女は、律のお父さんの妹の子どもだったわね。妹さんは性別を理由にいいポストをもらえなかったから躍起になっていると聞いたわ。彼女には要注意と言っていたし気を付けないと……)小森さんの情報をもとに、その後も顔と名前を一致させていく。受付の仕事をしていたこともあって顔と名前を覚えるのは得意だった。席次は事前に決まっており、上座に圭吾さんと隼人さん、香澄さんと続いている。私たちは一番隅に案内された。(なんで一番隅なの?この前の集合写真でも香澄さんは中央だったけれど律は一番隅だった。写真嫌いだからだと思っていたけれども、もしかしてあの時も場所が指定されていたの
last updateLast Updated : 2025-10-26
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83. 何も知らない私

帰りの車内では終始無言だった。形だけの契約結婚だったはずが、抱き合って、キスをして、最近は一緒のベッドでも寝るようになった。今も後部座席に隣同士で座っていて、手を繋ごうとすれば繋げる距離にいる。きっと律に出会う前の独身時代の私だったら、彼氏や気になる人とこのシチュエーションでいたら、迷うことなく私から手を握っていただろう。驚いてこちらを見る彼に、照れたように微笑んで「手を繋ぎたくなっちゃった」とか言って甘えていたはずだ。だけど、今はそんな気になれなかった。時折、横目で律を見ると、窓からぼんやりと景色を眺めていて、何を考えているか分からなかった。「ねえ、私に隠していることない?私が知らないことがあるんじゃないの?」部屋に入ってすぐに問い詰めると、律は眉をピクリと動かし黙っている。その反応が、苛立ちなのか、動揺なのかは読み取れない。無表情のまま、視線を私に、じっと向けて無言を貫いていた。しばらくの沈黙が続いて、耐えきれなくなった私は苛立ちと共に吐き出すように律に行った。「そう、何も話すつもりはないわけ?私は、律の口から聞きたかったけど、律がそういう態度なら他の人に聞くわ。隼人さんがいつでも電話してきてって言ってくれたし」私が隼人さんの名前を出すと、律は思った通りに不快感を露わにしている。
last updateLast Updated : 2025-10-27
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84. 慰められたい過去の私と、慰める今の私

これ以上、律に泣き顔を見せたくなくて、外へ出るために手を振り払おうとすると、律は必死で抵抗して離そうとしない。もう一方の手首も掴まれると、そのままソファに押し倒された。「違う、違うんだ、凛……。信用とかそういうのではないんだ」律の声が震えている。瞳を潤ませていた律は、ソファと私の顔のわずかな隙間に顔をうずめると、私に覆い被さるような体制のまま、しばらく黙ったままでいた。私と律の頬がくっついている。律の目元から生温かい雫が私の頬を湿らす。(知りたいのは、泣きたいのは、私の方なのに……。でも、律にそんな顔されたら責められないよ。)声を震わせる律も、目を潤ませ涙目になる姿も、私の胸を強く締め付けている。律に手首を掴まれたまま、私が律の頬を撫でると、律は手首を握っていた力を徐々に弱めていった。完全に私の手首を離すと、私は片方で律の背中をさすり、もう片方で律の頭を撫でた。今まで男性に慰めてもらう側だった私が、律の弱弱しい姿を見て、初めて心から慰めたいと思った。律の悲しんでいる顔を見ると、自分のことのように胸が苦しく、切なくなった。律が落ち着くまで、私は背中をポンポンと叩いて頭を優しく撫で続けた。律が身を委ねるように私に体重を預けている。「もう少しこのままでいさせてくれないか。そうしたらちゃんと話すから&hellip
last updateLast Updated : 2025-10-27
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85. 律の過去、蓮見家との繋がり

「円華さんや隼人さんが言っているのは、家柄のことだ」しばらくして律は小さな声でポツリと呟いた。声は少し震えていて、耳元で囁くような震えている。「家柄……?」それだけでは内容が分からず聞き返すと、律は体を起こして私の身体から身を離した。私も起き上がり、ソファで律と隣同士で向き合って座った。「俺が、蓮見家の子供であることは間違いない。だけど、俺は父の愛人の子で、元々は母と二人で暮らしていた。だけど、学生の時に母がガンになった。余命宣告された母は、父に助けの連絡を入れたんだ。学業の成績が良かったのが功を奏して、父に気に入られて、母が亡くなってすぐに俺は蓮見家に入った。内藤、これが俺の旧姓だ」「愛人の子ども……?内藤律?」「姉とは血は繋がっているけれど、母親は違う。香澄さんの母親が、父の妻で、俺は愛人の子ども。だから立場は低くて周りから批判を受けやすいんだ。今日の懇親会で隅に座らされたのも、そのせいだ」集合写真や今日の懇親会で香澄さんと律の場所が違ったこと、隼人さんや円華さんが否定的なことを言ってきた謎が一気に解けた。「律が年下の隼人さんのことをさん付けで呼ぶのも、そのため?」「ああ、隼人さんは歳は下だが父の兄の子どもだ
last updateLast Updated : 2025-10-28
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87. 本物の夫婦と律と迎える朝日

「凛―――――」律が優しく私を呼ぶ声がする。ソファに向かい合って座っていた私たちだが、律が私の顎に指を添えてキスをすると、もう一方の手を私の背中に添えた。律の腕に支えられながら、私はソファへとゆっくりと身体を沈めていく。お互いの手が触れると、指を絡めて力強く握り続けていた。「……ん、律」唇をわずかに離した時に、漏れるように律の名前を呼ぶと、激しさを増してキスをした後に、身体を起こして私をお姫様抱っこで持ち上げてきた。「え、律……?」「……いやか?」私を見つめながら、短く聞いてくる律に少し俯きながら小さく首を横に振った。律に抱えられながら寝室へ向かい、今までにない距離感でお互いの存在を確かめ合った。律の熱も、匂いも、吐息も、余裕のない表情も、すべてが愛おしくて何度も名前を呼びあっていた。―――――――朝になり、目が覚めると一糸まとわぬ姿の律と私がいた。いつもは私に背中を向けて寝ている律が、今日は私の方に顔を向けている。律の顔をもっと近くで見ようと、少し身体を動かすとシーツと布団のかすれる音が小さく鳴った。その音で律はもぞもぞと動いている。
last updateLast Updated : 2025-10-29
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89. 理想を捨てて掴んだ愛

「凛、どうしたの?にやけちゃって? なんかいいことでもあった?」「んーなんでもない」土曜日の昼、カフェで友人と会っていたが、数日前の律とのことを思い出すと頬が緩んで仕方がなかった。律の秘密を共有し、心身ともに結ばれ、遅くなったが今になって本当の新婚生活のような甘さを体感していた。(あーもう、朝起きて目が覚めて律が隣にいるって、好きな人がいるってこんなに幸せなことだったんだ)「どうせ旦那さんのことでも考えていたんでしょ。いいな、凛は。御曹司で玉の輿だもんな。そのうえ、将来有望とか羨ましすぎる」友人は知らないが、その将来があるかは分からなかった。律の話だと、親族がどの企業のトップになるかによって状況が変わる可能性もあると説明された。例えば、律が取引先が自社グループのみの小さい会社の社長になった場合、相手の社長が円華さんのような律のことをよく思わない人になった場合、律の会社を自分の子会社にすることだってできる。そうなると、社長でも律は円華さんの言うことを聞くしかない雇われ社長のような存在になるらしい。(この状況を友人に話したら、『すぐに律から離れるべきだ』と言うかも。だから、これは私と律だけの秘密だ)今までだったら、付き合っていた相手の生い立ちを知って、将来が不透明と分かった時点で、騙されたと逆上して別れを告げていたと思う。
last updateLast Updated : 2025-10-30
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