All Chapters of 誰が悪女だから幸せになれないって?〜契約結婚でスパダリを溺愛してみせる〜: Chapter 71 - Chapter 80

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72. 可愛くない態度と拗ねる律

トゥルルル、トゥルルル―――――私たちのキスを止めたのは、律のスマホの着信だった。音楽も何もかけていない静かな空間で着信音が大きく響き渡り、二人して肩をピクリと動かして唇を離した。「はい、蓮見です。はい、はい、来月に役員会?分かった。今日はもう家だ。明日確認する。ああ、ん、なんでもない。それじゃあ」(もうなんでこんな時に電話がなるのよ、ビックリしちゃったじゃない……)タイミングの悪さに誰だか分からないが電話主を恨んでいると、電話を終えた律は小さくため息をついて「なんでこんな時に……」と呟いていた。普段からは到底考えられない、拗ねるようにボソッという姿が可愛いくて、胸の奥をくすぐってきて自然と笑みが零れていた。私の様子に気がついて律は恥ずかしそうにそっぽを向いている。しばらくしてから、いつもの無愛想な表情に戻って冷たく言ってきた。「来月、蓮見グループの役員以上が集まることになった。会長である祖父も参加する。俺が、結婚して後継者にふさわしいとアピールをするチャンスの場だ。凜も参加してくれ。あとそれとは別に今週の金曜日も集まりがある。当日は秘書の小森が家まで迎えに来るから準備しておいてくれ」「分かったわ、秘書って小森さんっていうのね。いつもお世話になっている方でしょ?」「ん、まあ、そうだが?」
last updateLast Updated : 2025-10-21
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74. 律との出逢い、人生を変えた一夜

「今日の集まりは、経済情報誌の懇親会です。立場や役職も様々で、異業種交流会にも近い感じですね。固いものではないので緊張せずに楽しんでください。蓮見専務は乾杯前に一言挨拶を欲しいと言われていますので、係の誘導がありましたら前にお願いします」「分かった」会場への移動中、小森さんが今日の集まりの概要について説明してくれた。取引先との接待ではないフランクな集まりだそうで、少しだけ気が軽い。(律って挨拶も頼まれるくらい凄い人なんだ。仕事しているところ知らないけれど、普段の律はどんな感じなのだろう)家にいる時の姿しか知らないので、仕事の人と話す姿を見るのは新鮮で、律の色んな一面を見たいという好奇心が湧いて後部座席で隣に座っている律をチラリと見た。会場に着くと、シャンデリアがキラキラと輝き、会場の端にメニューが並ぶ立食スタイルで懇親会は開かれた。会場の熱気に私も自然と気が引き締まる。雰囲気やパーティースタイルが、律と初めて会ったプレミアム合コンの時と似ていて、なんだか懐かしい。(律ったら、私が他の人と話をしているのに無理やり割り込んで話に入ってきたのよね。その一週間後には契約結婚だけどプロポーズされて……今考えると、私の人生、あの日で一気に変わったな)律との出逢いが私を変えた。あの出逢いがなければ、私は仕事の契約期間も切れて、ストーカーに家がバレて無職で引越しせざるを得なかった。
last updateLast Updated : 2025-10-22
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75. 濡れたドレスと、律のジャケット

ぼんやりと周りを見渡していると、後ろから男性がぶつかってきて、手に持っていたシャンパンがワンピースにかかってしまった。男性は知人と話しながらよそ見をしていたようで、私の存在に気がつかなかったらしい。この日のためにおろしたシフォン素材のワンピースの胸元にシャンパンがかかり、水たまりのようなシミを付けて肌にべったりとくっついている。少しだけ透けてしまった胸元を慌てて手で隠していると、男性も気づいて謝ってきた。「Sorry……」申し訳なさそうな顔で男性は話しかけてきているが、フランス語のような言語のため、何を言っているか分からない。碧い綺麗な瞳と堀の深い綺麗な顔でまじまじと見つめられて緊張をしていた。そして、何か必死で語り掛けていると思ったら、腕を掴んで会場の外へと連れ出そうとしている。(やだ、何?何を言っているの?どこに行こうとしているの?)どうしていいか分からないで困っていると、律が低い声で男性の腕を掴んで話しかけている。二人は言葉が通じるようで、ペラペラと会話が進んでいく。律の表情は、怒りというよりも猛禽類のような鋭い警戒心に満ちていた。二人のやり取りを静かに聞いていたが、律は突然私の肩に手を置くと、強い力で自分の胸元に引き寄せた。それを見た男性は、もう一度小さく謝ってその場を離れていった。「え、何?あの人はなんて言っていたの?」
last updateLast Updated : 2025-10-23
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76. 簡易ベッドとさようなら

「今日は、ありがとう。あなたがいてくれて良かった」「ああ。服、汚れているだろう。先にシャワーでも浴びてきたらどうだ」家に帰ってきてからお礼を言うと、律は素っ気なく返してきた。最初の頃は、この反応が嫌だったが、今はこれが照れ隠しだと分かり、なんとなく心をくすぐってくる。素直にシャワーを浴びるため洗面所の鏡を見ると、胸元に丸くシャンパンの薄い黄色シミができて汚れている。そのシミのあとをなぞりながら、先程の律のことを思い出していた。(律って不愛想だし冷たいけれど、さっきも、出逢ったばかりの頃ストーカーに鉢合わせした時も守ってくれたし、結局いつも私を助けてくれるのよね。)シャワーを浴び終えてリビングに入ると、律はスーツからスウェットに着替えて、スマホをいじりながらくつろいでいる。家では眼鏡をかけている律の姿は、私だけしか知らない秘密みたいでちょっと優越感に浸れて嬉しかった。「ありがとう。律もシャワー浴びてくれば?」「ああ、そうする」律がいなくなってから、リビングのソファに座って律が戻るのを待っていた。律の座っていた場所は、まだ温かい残り香が微かに感じられる。十五分程するとシャワーしか浴びていない律が、髪をタオルで乾かしながらリビングに戻ってきた。「まだここにいたのか」髪を乾かしていたタオルを首にかけて、簡易ベッドを広げて寝る準備をしている律に近付いて、服の袖を掴んですこし緊張気味に話しかけた。「ね、いつまでこの部屋で寝るの?寝室はここではないでしょ?ちゃんとしたベッドがあるならそっちで寝ればいいじゃない」「え……?」
last updateLast Updated : 2025-10-23
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78. 家系内の権力闘争

その日の夜、帰宅してリビングに入ってくるなり、律は疲労の顔を隠さずに小さくため息をついた。「来月の会長が出席する役員会の前に、各グループ会社の幹部だけで集まる機会が出来た。凜も用意しておいてくれ」「幹部会?何か打ち合わせでもするの?」呑気に答える私に、律は冷たい瞳で一瞥した後にネクタイを緩めながら話を続けた。「打ち合わせや会議だったら大した事ないが、今回は顔合わせが主な目的だ。会長と会う前に事前に相手の情報を知っておこうという魂胆で、当日会長に認められたりしたら相手の弱いところを突いて評価をあげさせないようにするんだ」「何それ、相手を陥れるために会うの?」「それだけみんないいポストに尽きたくて必死なんだ。同じグループ会社の社長でも、数千人の従業員で何千億稼ぐ社長と、百人程度で一億いくかどうかの企業の社長だと印象が全然違うからな」「まあ、そうだけど。実力で勝負しなさいよって感じるけど色々あるのね」「……」私の言葉に律は苦笑している。その顔には、重要性が分かっていない私への諦めと、わずかな寂しさが滲んでいるようだった。「当日は、俺だけでなく凜のところに
last updateLast Updated : 2025-10-24
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