学校帰りのハルナは、いつものように制服をラフに着こなしていた。ワイシャツのボタンはいくつか開けられ、ネクタイは緩められている。スカートの下には、動きやすいように短パンを履いている。今日もおなじ格好をしていた。これから自分の部屋に戻って着替える途中なのだろう。「あ、俺トイレに……」 俺の声で我に返ったハルナは、慌てた様子で返事を返してきた。「……あ、うん。いってらー」 俺はトイレを済ませ、扉を開けた。すると、そこにはハルナが待っていた。 もうとっくに自分の部屋へ向かったと思っていたのに、彼女は廊下の壁にもたれかかるようにして、じっと俺が出てくるのを待っていたのだ。その意外な行動に、俺は思わず言葉を失う。「あれ? 着替えは?」 俺がそう尋ねると、ハルナはパッと顔を赤くし、動揺した様子で言った。「……あ、まだだった!」 その反応は、いつもサバサバしているハルナらしくなくて、俺は少し驚いた。頬には、ほのかに赤みが差している。俺を意識しているのか、目を合わせようとせず、チラチラと俺の顔を見るが、目が合うと慌てて視線を逸らした。 その可愛らしい仕草に、俺は思わずキュンとしてしまう。あれ? こんなに可愛かったっけ?「着替えないの?」「……だってさ、その……待ってなきゃ……ユイト兄さぁ、兄ちゃんの部屋に戻っちゃうじゃん!」 その言葉に、俺は思わず苦笑する。まあ、そうだよな。戻るのが普通だろう。ハルナの兄貴たちと遊んでるんだからな。「そうだな、戻るよな……」「でしょ。だから待ってたの……」 ん? さっきは「あ! 忘れてた!」って言ってたのに……? やっぱり、俺が「ハルナに会いに来た」と言ったから、気を使って待っててくれたのか。そう考えると、なんだか胸が温かくなった。
Last Updated : 2025-10-05 Read more