中に入ると、外の光が遮られ、一気に薄暗くなった。壁際には、古くなった跳び箱や、錆びついた鉄棒が、影となってひっそりと佇んでいる。俺は、ユウカが完全に中に入ったのを確認すると、素早く扉を閉め、内側からカチリと鍵をかけた。「わぁ……ユイトくん、悪い子だぁー!」 ユウカは、まるで子供のように目を輝かせて、はしゃいだ。その声は、この密室に吸い込まれていく。俺は、少しだけ得意げに、そして甘く、囁くように言った。「んふふ……ユイカも、悪い子に仲間入りだな」「えぇー!? わぁー、わたしを巻き込まないでよぅー」 ユウカは、頬を膨らませ、俺の腕を軽く叩いた。その仕草は可愛らしいが、その瞳には、すでに悪戯な光が宿っている。「じゃあ、何もしないでこのまま出るか?」 俺がそう言うと、ユウカは、一瞬だけ俯き、何かを考えるように黙り込んだ。そして、ゆっくりと顔を上げると、真っ赤に染まった頬と潤んだ瞳で、俺の目をじっと見つめ、決意を秘めた声で言った。「……でない。わたし……悪い子になるぅ」 その言葉と共に、ユウカは俺の胸に、ぎゅっと抱きついてきた。俺は、その小さな体に、そっと腕を回した。静かで、埃っぽい倉庫の中は、二人の高鳴る鼓動だけが響き渡っていた。「こういうのって、ドキドキ……しちゃうね」「だよなー俺、実は初めて入るんだけどな……」「そ、そうなの?」 俺は、窓もない薄暗い壁を手探りでなぞり、記憶を辿りながら明かりのスイッチを探した。「そうそう、完全に忘れてたし、使う機会なくてさ」 そう言いながら、指先がひんやりとした壁の感触を捉えた。カチリとスイッチを押すと、天井の裸電球が、パッと明るく光を放った。埃が舞い、その光の中に無数の粒子がキラキラと浮かび上がる。 周りを見回すと、古くなったバスケットボールや、埃をかぶった跳び箱、そして隅には、真新しい予備のマットが、積み重ね
Last Updated : 2025-10-29 Read more