Semua Bab 離婚して、今さら愛してると言われても: Bab 81 - Bab 90

117 Bab

82.始動

遥side朝、太陽の光が庭の木々たちの隙間を抜けてカーテン越しに私を照らし、新しい一日のはじまりを教えてくれる。昨夜、月島さんの腕の中で感じたあの熱い鼓動や、彼に打ち明けた花蓮のことや父親の秘密。その重みが、まだ微熱のように体に残っている。けれど、世界は止まらない。悲しくても、嬉しくても、どんな時でも朝は必ずやってくる。そして、今日という日は、東宮グループの新しい子会社の社長として、多くの社員の人生を背負う立場になる、私にとって人生の『特別』な日だ。鏡の前に立ち、ライトグレーのパンツスーツに袖を通す。このスーツは、俊が新しい門出にと贈ってくれたものだ。「花蓮、ママ、お仕事に行ってくるわね」 「ママ、かっこいい! 頑張ってね!」玄関で花蓮が弾けるような笑顔で手を振ってくれる。執事たちの温かい眼差しに見守られながら、私は新生活への一歩を踏み出した。会社設立といっても、父や俊の計らいでオフィスの場所は変わらず、フロアが移動しただけで、ワンフロアすべてが私たちの新会社となった。窓が大きく、開放感のあるオフィスに、プロジェクトメンバーたちは歓声を上げて喜んでいる。午前十時。月島さんも交えて全員での顔合わせが始まった。 会議室に集まったメンバーたちの顔には、自分たちが積み上げてきた努力が「会社」という形になったことへの誇りが溢れている。そんな中、共同代表を務める
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83.距離

遥side(月島さんの中では、昨夜の告白はなかったことにして欲しい……ということなのかな。そうよね、子どもがいるなんて知ったら、想いが冷めても無理はないわ)会議室を出てオフィスに戻ろうとする私の背中に、月島さんが追いかけて話しかけてきた。「遥さん、今、大丈夫ですか? 午後は会議で予定が詰まっているため、もしお時間があるようでしたら、今のうちにオフィスの案内をしてもらえると嬉しいのですが……」(今、月島さんと二人きりになったら、午後の重要な会議に響くかもしれない。会社の社長としてしっかりしなくちゃ……)「ごめんなさい。午後の会議資料に、まだ完全に目を通せていなくて。案内は、開発チームのリーダーにさせるよう頼んでおきますね。男性同士の方が、私では入れない場所も入って案内することができるでしょうし……」そう言って、私は月島さんと二人きりになることを避けた。仕事の話はするし、業務に支障をきたすようなことは絶対にしない。それに、周りに誰かがいれば仕事モードになり、集中することが出来た。月島さんの出した答えを受け止めるなんて言いながら、傷ついている自分がいることに気がついた。だけど今は、仕事が大事で何よりも優先すべき事項だ。傷ついている場合ではない。仕事を忙しく
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84.愛のカタチ

遥side私の手首を掴む月島さんの手の温度だけが、異常なほど熱く感じられた。その指先からは、彼がこの十日間、私と同じように……あるいは私以上に葛藤し、苦しんでいたことが痛いほど伝わってくる。「……あの、遥さん。この前、あなたを困らせたり、嫌な思いをさせてしまったなら、本当にすみませんでした……」月島さんの低いけれど温かい声。この声をしっかりと聞くのは、なんだかとても久しぶりな気がする。いつしか月島さんが隣にいるのが当たり前になっていて、こうしてゆっくり話すことを避けていたのはたった十日間だというのに、ひどく前のことを思える。「そんなことありません……。私の方こそ、花蓮のことをずっと黙っていて……。月島さんに不快な思いをさせてしまい、すみませんでした」久しぶりに話をしたというのに、私の声は震えている。月島さんの顔を直視することができず、私はシーツのしわを見つめたまま、絞り出すように謝罪を口にした。でも、これだけでは、月島さんに気を遣わせてしまう。小さく唇を噛みしめてから、今度は少し声を明るくして精一杯強がって言葉を振り絞った。「……新会社も始まったばかりですし、これからも仕事は今まで通り願いします」靴を履き、繋がれた手を振りほどこうと一瞬だけ月島さんの顔を見ると、月島さんは、まるで深い傷を負った子供のような、戸惑いと哀しみに満ちた表情で私を見つめていた。その瞳の揺れに、私の胸は激しく締め付けられる。「遥さん……何か誤解をされていませんか? 私は、遥さんに対して不快な思いなど一度たりとも抱いていません。私が『怒り』を感じたのは、遥さんにではなく……住吉社長に対してです」「……え?」「住吉社長は、花蓮ちゃんの存在をご存知ではないと言っていましたよね。どんな事情があったのか、私には分かりません。ですが、遥さんが子どもを授かったことさえ住吉社長に言えず、一人で抱えて別れを選んだのだとしたら……。その時の遥さんは、どれほど苦しく辛い思いをしてきたのかと考えたら、怒りが湧いてきたんです」月島さんの言葉は、私が両手で必死に押さえつけて誰にも見せないように塞いできた心の傷口を、優しく、静かにほどいていく。 隠さなくていい。強がらなくていい。そう言ってくれているようで、剥き出しになった私の心は、激しい痛みと哀しみとなり、大粒の涙となって私の頬を濡らす。そんな私を包
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86.家族

遥side週末。仕事が休みのこの日、月島さんにどこかに出掛けないかと誘いを受けたとき、私の胸は喜びと少しばかりの緊張で小さく跳ねた。これまでも休日に仕事の関係で顔を合わせることはあったけれど、私の中で、受け止め方は以前とは決定的に違っている。「遥さん。今度の休みなんですが……もしよろしければ、花蓮ちゃんも一緒に出掛けることは可能ですか?」仕事終わりに月島さんに車で送ってもらっている途中、少し緊張したような声で私に尋ねてきた。「花蓮……と、ですか?」「ええ。休みの日も遥さんと一緒にいたいと思うのですが、それだと花蓮ちゃんからママを奪ってしまうことになる。なので、花蓮ちゃんさえ良ければ三人でどこかへ行きませんか?いきなり長い時間だと花蓮ちゃんも緊張してしまうでしょうから、まずは食事だけでもどうでしょうか」平日は新会社の経営に追われ、仕事中心の生活を送っている。だからこそ、休日はできる限り花蓮との時間を大切にしたいと思っていた。そんな私の気持ちを言葉にしなくても、月島さんは理解してくれていた。彼の方から三人での外出を提案してくれたことが、花蓮も大事にしてくれていることが伝わってきてとても嬉しい。「ありがとうございます。……花蓮にも、聞いてみますね」家に帰り、リビングで絵本を読み終わっ
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87.プレゼント

遥side直人さんと交際が始まって半年が過ぎた。花蓮も今ではすっかり直人さんに懐いて、週末に彼が迎えにやってくるのを玄関で今か今かと待ちわびるほどだ。仕事の方では、新製品の発売日がいよいよ確定した。今月からネットでの情報公開が解禁され、メディア向けの完成発表会を皮切りに一気に世の中へと放たれ、私や直人さんは、連日のメディア対応に明け暮れることとなった。 世界的なAI先駆者としても知られるハリー・ボンド氏と東宮家の共同出資。そのインパクトは世間にとって「特大のニュース」だった。製品の革新性はもちろん、開発秘話や、新社長に異例の抜擢を受けた私と直人さんにもスポットライトが当たり、二人揃って経済誌の表紙を飾ったり、夜のニュース番組でインタビューを受けたりすることも珍しくなくなった。こうして東宮家の令嬢としてメディアに出て以来、二回目の取材やマスコミ対応となった。一度目のマスコミ対応は、東宮家の令嬢として見定められるためのものだったが、今回は違う。一人の経営者として確かな手応えが自信となり、私はかつてないほど意欲的に、そして誇りを持ってカメラの前に立っていた。製品の性能、徹底したマーケティング、そして「東宮」のブランド力。それらが完璧に噛み合い、事前予約の枠は瞬く間に完売し、急遽、一万台の追加枠を設けることが決定した。 予約完売の朗報は、すぐにハリーにも伝えられ、翌週末の夜に、ハリーと兄の俊、そして直人さんと私の四人で祝賀会を行うことになった。 直人さんとは今や恋人同士だが、今日はハリーも同席する公的なお祝いの場だ。
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88.黒雲

奏多side「遥と月島が新会社の社長だって……?」ネットでニュースサイトを確認していると、『東宮グループ』の文字が流れてきた。反射的にタップして詳細を開くと、そこには眩いばかりのライトを浴びた二人の姿が、鮮明な画像と共に掲載されていた。『米・ハリー・ボンド氏と東宮グループが、AIと国際会計システムを駆使した次世代会計ソフトの販売を開始。共同出資の新会社を設立し、日本の会計業界に大きなAI旋風なるか。新社長、月島直人氏と東宮遥氏を直撃。』四ページにわたるロングインタビュー。写真の遥は、知的な光を宿した瞳で前を見据えている。その隣で、月島が彼女を誇らしげに見つめ、時折、二人が視線を交わして微笑み合っていた。対談の内容を流し読みしたが、二人のやり取りからは、言葉にせずとも伝わる深い信頼関係が見える。それが、妙に癪に障ってすぐに画面を閉じた。 「……ふざけやがって。あの二人、月島銀行の監査が終わったら接点はなくなったんじゃないのか。あの時点からこのプロジェクトを進めていたのか?それとも、最初から仕事とは関係ないところで……」監査に来た時の月島のことを思い出す。あの時から、彼が遥に向ける視線にはビジネスパートナー以上の熱がこもっていた気がしてならない。苛立ちを紛らわすようにスマホをデスクに放り投げた瞬間、『星野麗華』の文字が画面が浮かび上がった。
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89.朝の真相

麗華side「なんであの女が社長なんかに?それも、私と違って世間からも注目を浴びるなんて……」ネットであの女の記事を見て奏多に言いつけると、相手にしてもらえないどころか資料の提出を指摘されてしまった。そんなの、部下に丸投げしているから分かるはずがない。そもそも、私が社長を引き受けてあげたのは、奏多のメンツを保つためであっておじさんたちの面倒を見るためじゃない。(ああー、もう! 何よ、奏多もあの女のことを罵るかと思ったら、何も言わないなんて……。でも、電話の声はひどく不機嫌だったわね。あの月島って男と一緒に写っていたから? 私もあの生意気な男のせいで就任パーティーの時は恥をかかされたし……。そもそも、一つの会社に社長が二人もいらないわ。二人まとめて消えてくれればいいのに)社長業というのは、私が夢見ていた華やかな世界とは程遠い地味で退屈だった。特に五十嵐のような地方の中小企業では、華やかなパーティーも高級ホテルでの会食も皆無。たまにある接待といえば、地元の居酒屋だ。せっかく最新のトレンドを取り入れたネイルを施しても、誰も分かってくれる人はいない。それに自分の親ほど年の離れたおじさんたちに褒められても嬉しくも何ともない。それどころか、仕事に拘束されるせいで、買い物に行く時間もエステやジムに通う時間も削られていく。
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90.宣言

遥side私たちが開発した製品は右肩上がりで売上を伸ばし続け、連日メディアの注目を集めていた。販売開始から三か月が経ち、目立ったトラブルもなく日々の受発注業務も安定している。直人さんと私は、共同経営者である兄の俊とハリーの計らいで用意された視察旅行へ行くことにした。社員たちも長年一緒にやってきたメンバーばかりなので、内容もトラブルが起きた時の対応も一通り熟知しており、視察の件を話したら快く見送ってくれた。出発を数日後に控えたある日。打ち合わせが予定より早く終わり、私たちがオフィスに入ろうとエントランスのドアを開けようとした時だった。中から楽しげな笑い声と共に社員たちの会話が漏れ聞こえてきた。「ねえ、ぶっちゃけ社長たちって実際のところどうなんですかね? お互いに絶対好意持ってますよね」 「やっぱりそう思う? あの二人、打ち合わせ中も息がぴったりだし、もしかしたら、もう付き合っていたりして」 「あり得るな。でも、社長たちってお似合いじゃないですか。仕事は仕事でキッチリ切り替えているし、もし本当なら、僕は全力で応援したいな」 「私も。二人とも本当にいい人だし何より美男美女で並んで歩くだけで絵になりますよね」まさか自分たちがそんな風に噂されているなんて。気恥ずかしさと認められている安堵感が混ざり合い、顔が火照る。
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