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88.黒雲

last update publish date: 2026-04-08 19:03:49

奏多side

「遥と月島が新会社の社長だって……?」

ネットでニュースサイトを確認していると、『東宮グループ』の文字が流れてきた。反射的にタップして詳細を開くと、そこには眩いばかりのライトを浴びた二人の姿が、鮮明な画像と共に掲載されていた。

『米・ハリー・ボンド氏と東宮グループが、AIと国際会計システムを駆使した次世代会計ソフトの販売を開始。共同出資の新会社を設立し、日本の会計業界に大きなAI旋風なるか。新社長、月島直人氏と東宮遥氏を直撃。』

四ページにわたるロングインタビュー。写真の遥は、知的な光を宿した瞳で前を見据えている。

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  • 離婚して、今さら愛してると言われても   88.黒雲

    奏多side「遥と月島が新会社の社長だって……?」ネットでニュースサイトを確認していると、『東宮グループ』の文字が流れてきた。反射的にタップして詳細を開くと、そこには眩いばかりのライトを浴びた二人の姿が、鮮明な画像と共に掲載されていた。『米・ハリー・ボンド氏と東宮グループが、AIと国際会計システムを駆使した次世代会計ソフトの販売を開始。共同出資の新会社を設立し、日本の会計業界に大きなAI旋風なるか。新社長、月島直人氏と東宮遥氏を直撃。』四ページにわたるロングインタビュー。写真の遥は、知的な光を宿した瞳で前を見据えている。その隣で、月島が彼女を誇らしげに見つめ、時折、二人が視線を交わして微笑み合っていた。対談の内容を流し読みしたが、二人のやり取りからは、言葉にせずとも伝わる深い信頼関係が見える。それが、妙に癪に障ってすぐに画面を閉じた。「……ふざけやがって。あの二人、月島銀行の監査が終わったら接点はなくなったんじゃないのか。あの時点からこのプロジェクトを進めていたのか?それとも、最初から仕事とは関係ないところで……」監査に来た時の月島のことを思い出す。あの時から、彼が遥に向ける視線にはビジネスパートナー以上の熱がこもっていた気がしてならない。苛立ちを紛らわすようにスマホをデスクに放り投げた瞬間、『星野麗華』の文字が画面が浮かび上がった。

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   87.プレゼント

    遥side直人さんと交際が始まって半年が過ぎた。花蓮も今ではすっかり直人さんに懐いて、週末に彼が迎えにやってくるのを玄関で今か今かと待ちわびるほどだ。仕事の方では、新製品の発売日がいよいよ確定した。今月からネットでの情報公開が解禁され、メディア向けの完成発表会を皮切りに一気に世の中へと放たれ、私や直人さんは、連日のメディア対応に明け暮れることとなった。世界的なAI先駆者としても知られるハリー・ボンド氏と東宮家の共同出資。そのインパクトは世間にとって「特大のニュース」だった。製品の革新性はもちろん、開発秘話や、新社長に異例の抜擢を受けた私と直人さんにもスポットライトが当たり、二人揃って経済誌の表紙を飾ったり、夜のニュース番組でインタビューを受けたりすることも珍しくなくなった。こうして東宮家の令嬢としてメディアに出て以来、二回目の取材やマスコミ対応となった。一度目のマスコミ対応は、東宮家の令嬢として見定められるためのものだったが、今回は違う。一人の経営者として確かな手応えが自信となり、私はかつてないほど意欲的に、そして誇りを持ってカメラの前に立っていた。製品の性能、徹底したマーケティング、そして「東宮」のブランド力。それらが完璧に噛み合い、事前予約の枠は瞬く間に完売し、急遽、一万台の追加枠を設けることが決定した。予約完売の朗報は、すぐにハリーにも伝えられ、翌週末の夜に、ハリーと兄の俊、そして直人さんと私の四人で祝賀会を行うことになった。 直人さんとは今や恋人同士だが、今日はハリーも同席する公的なお祝いの場だ。

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   86.家族

    遥side週末。仕事が休みのこの日、月島さんにどこかに出掛けないかと誘いを受けたとき、私の胸は喜びと少しばかりの緊張で小さく跳ねた。これまでも休日に仕事の関係で顔を合わせることはあったけれど、私の中で、受け止め方は以前とは決定的に違っている。「遥さん。今度の休みなんですが……もしよろしければ、花蓮ちゃんも一緒に出掛けることは可能ですか?」仕事終わりに月島さんに車で送ってもらっている途中、少し緊張したような声で私に尋ねてきた。「花蓮……と、ですか?」「ええ。休みの日も遥さんと一緒にいたいと思うのですが、それだと花蓮ちゃんからママを奪ってしまうことになる。なので、花蓮ちゃんさえ良ければ三人でどこかへ行きませんか?いきなり長い時間だと花蓮ちゃんも緊張してしまうでしょうから、まずは食事だけでもどうでしょうか」平日は新会社の経営に追われ、仕事中心の生活を送っている。だからこそ、休日はできる限り花蓮との時間を大切にしたいと思っていた。そんな私の気持ちを言葉にしなくても、月島さんは理解してくれていた。彼の方から三人での外出を提案してくれたことが、花蓮も大事にしてくれていることが伝わってきてとても嬉しい。「ありがとうございます。……花蓮にも、聞いてみますね」家に帰り、リビングで絵本を読み終わっ

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   85.宣言

    遥side「遥さん……っ……」月島さんの唇が、私の唇をゆっくりと這う。絡み合うような濃厚な熱が伝わり甘い吐息が漏れた。彼の手が、大切なものに触れるかのように優しく私の頭を撫でる。『愛されている』今まで感じたことのない安心感が、心の奥底から泉のように湧き出てくる。深い愛情に心と身体が満たされ、月島さんの触れた唇や、背中に回された手の平から熱が伝播し、肌が火照っていく。「月島さん……」指と指を絡めながら、互いの存在を確かめ合うように長い長い口付けを交わした。ここは、新しく借り上げたオフィスの静かな休憩室。今は二人きりだが、いつ誰が来てもおかしくない。乱れた呼吸のまま、至近距離で顔を見合わせると、愛しいという純粋な感情と、職場でこれほど感情を剥き出しにしてしまった背徳感が混ざり合い、急に顔が熱くなった。「あの、家まで送ります。……荷物と車を取ってくるので、遥さんはここで待っていてください」月島さんは少し照れたように、言い残すと早足で部屋を後にした。私は、夢でも見ているような脱力感に包まれながら、その後ろ姿を見送った。(私、今、感情のままに動いていたわ&hellip

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   84.愛のカタチ

    遥side私の手首を掴む月島さんの手の温度だけが、異常なほど熱く感じられた。その指先からは、彼がこの十日間、私と同じように……あるいは私以上に葛藤し、苦しんでいたことが痛いほど伝わってくる。「……あの、遥さん。この前、あなたを困らせたり、嫌な思いをさせてしまったなら、本当にすみませんでした……」月島さんの低いけれど温かい声。この声をしっかりと聞くのは、なんだかとても久しぶりな気がする。いつしか月島さんが隣にいるのが当たり前になっていて、こうしてゆっくり話すことを避けていたのはたった十日間だというのに、ひどく前のことを思える。「そんなことありません……。私の方こそ、花蓮のことをずっと黙っていて……。月島さんに不快な思いをさせてしまい、すみませんでした」久しぶりに話をしたというのに、私の声は震えている。月島さんの顔を直視することができず、私はシーツのしわを見つめたまま、絞り出すように謝罪を口にした。でも、これだけでは、月島さんに気を遣わせてしまう。小さく唇を噛みしめてから、今度は少し声を明るくして精一杯強がって言葉を振り絞った。「……新会社も始まったばかりですし、これからも仕事は今まで通り願いします」靴を履き、繋がれた手を振りほどこうと一瞬だけ月島さんの顔を見ると、月島さんは、まるで深い傷を

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   83.距離

    遥side(月島さんの中では、昨夜の告白はなかったことにして欲しい……ということなのかな。そうよね、子どもがいるなんて知ったら、想いが冷めても無理はないわ)会議室を出てオフィスに戻ろうとする私の背中に、月島さんが追いかけて話しかけてきた。「遥さん、今、大丈夫ですか? 午後は会議で予定が詰まっているため、もしお時間があるようでしたら、今のうちにオフィスの案内をしてもらえると嬉しいのですが……」(今、月島さんと二人きりになったら、午後の重要な会議に響くかもしれない。会社の社長としてしっかりしなくちゃ……)「ごめんなさい。午後の会議資料に、まだ完全に目を通せていなくて。案内は、開発チームのリーダーにさせるよう頼んでおきますね。男性同士の方が、私では入れない場所も入って案内することができるでしょうし……」そう言って、私は月島さんと二人きりになることを避けた。仕事の話はするし、業務に支障をきたすようなことは絶対にしない。それに、周りに誰かがいれば仕事モードになり、集中することが出来た。月島さんの出した答えを受け止めるなんて言いながら、傷ついている自分がいることに気がついた。だけど今は、仕事が大事で何よりも優先すべき事項だ。傷ついている場合ではない。仕事を忙しく

  • 離婚して、今さら愛してると言われても   23.溜め息

    遥side「花蓮、朝よ。調子はどう? 起きられそうかしら。お熱を測りましょうね」柔らかな日差しが差し込むベッドサイドに座り、私は花蓮の脇に体温計を滑り込ませた。まだ眠たげにしている花蓮の頭を優しく撫でると、花蓮はうっすらと目を開け、ふにゃりと力なく笑った。

    last updateLast Updated : 2026-03-22
  • 離婚して、今さら愛してると言われても   24.真の正体

    麗華side夜、部屋は間接照明だけを灯しソファに深く身体を沈める。グラスに注がれた赤ワインをゆっくりと回しながら、私は笑みを浮かべた。明日は、待ちに待った週刊誌の発売日だ。世間の人々が、遥という女がいかに卑劣な手段で他人の幸せを壊してきたかを知れば、あの東宮家も、そして奏多も、二度と彼女を振り返ることはないだろう。

    last updateLast Updated : 2026-03-22
  • 離婚して、今さら愛してると言われても   21.嫉妬

    奏多side翌日、社長室に差し込む太陽の光は不快なほどに明るかった。デスクに向かい仕事に集中しようとするが意識は散漫として進まず、目の前には確認すべき重要書類がうず高く積まれている。昨夜の光景が焼き付いて離れない。窓の外に広がる都会の景色を眺めては、重

    last updateLast Updated : 2026-03-21
  • 離婚して、今さら愛してると言われても   16.再会③ 奏多side

    奏多side「申し訳ないが、仕事以外の話ならお引き取り願いたい。彼女は僕の大切な人なんだ」東宮俊は、毅然とした態度で俺の話を拒んだ。そして愛おしそうに彼女を見つめると、俊の手が遥の肩に置かれる。「もう時間だ、行こうか」

    last updateLast Updated : 2026-03-20
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