アレクは彼らの様子を微笑みながら見守って、決意を新たにしていた。(俺が、必ず彼女の新しい世界になるんだ)「エリアーリア、ありがとう。俺と生きると決めてくれて」「ええ。あなたと、この子たちと、家族として生きていく。それが私の選んだ道よ」 彼女が自分のために、この穏やかな生活を捨ててくれる。その事実がアレクに深い感謝と、王としての責任を改めて感じさせていた。「さあ、行きましょう」 エリアーリアは最後に一度だけ、緑に覆われた小屋を振り返る。 七年間暮らしたこの場所は、アルトとシルフィが生まれてからの全ての時間だった。 思い出はたくさんある。名残惜しく思う気持ちもある。 でもそれ以上に、アレクとの未来を大切にしたかった。 エリアーリアは迷いなく、アレクの差し出す手を取った。◇ 全国の巡幸に出ていた国王が、辺境の薬草師と双子の子を連れて王都に帰還するというニュースは、瞬く間に国中を駆け巡った。 旅の道中、一行が通過する町や村では、人々が未来の王妃と王子、王女を一目見ようと、道にあふれている。 アルトとシルフィは、初めて見る世界の広さに目を輝かせていた。「かあさま、今日通った町の近くは、大きな川が流れていたね! あんなに大きな川、おれ、初めて見たよ」 アルトが言えば、シルフィも続ける。「緑色のぶどうを食べたの。ぶどうは紫色だと思っていたのに、ふしぎ。でも、おいしかった」 十日ほどの旅を経て、一行は王都へと帰り着いた。 民たちは熱狂的に歓迎してくれた。 王都では街路にたくさんの人が集まり、お祭り騒ぎだ。花が撒かれて華やかな空気に彩られていた。 しかし、貴族たちは必ずしも歓迎ばかりではない。自分の娘や妹を王妃にあてがおうとしていた者たちは、当てがはずれてしまって嫉妬の目を向けていた。 不幸中の幸いは、アルトとシルフィが父の面影と色彩を濃く宿していたために、血の繋がりを疑う者がいなかったくらいだろう。 アレクは王位に登る前
Last Updated : 2025-11-11 Read more