エリアーリアが懐かしい深緑の森に足を踏み入れると、明らかな異変が感じられた。 森の結界が破られている。それだけではない、獣の声も鳥の歌声も聞こえない。不自然な静けさが辺りを支配していた。(異常は覚悟していたけれど、ここまでとは) 歩みを進めるごとに、異変は濃くなった。魔力が乱れて、森が泣き叫んでいるようだ。 もう森との繋がりは切れてしまったとはいえ、ここは彼女が百年を過ごした場所。変わり果てた森の姿に胸が痛んだ。 エリアーリアは慎重に歩みを進めて、とうとう思い出の場所へ、アレクと暮らした「始まりの場所」へとたどり着いた。実に七年ぶりの帰還だった。(これは……!) けれどそこは彼女の記憶にあるような、静謐で穏やかな聖域ではなかった。 ダリウスの闇魔術によって、周囲の木々は不自然に枯れ果ててしまっている。地面には黒い魔方陣が描かれて、禍々しい魔力を脈動させていた。 百年を暮らした小屋には黒紫の茨が絡みついて、不吉で鈍い光を放っていた。「お望み通り、来たわ。出てきなさい、闇魔術師」 エリアーリアが言えば、小屋の扉が開いた。 ちらりと中に見えるのは、黒い茨の檻。檻の中に囚われたアルトとシルフィが、気丈にも涙をこらえて互いを支え合っている。「かあさま!」 シルフィが叫ぶと、黒い茨が蠢いた。双子に絡みつこうとしているのを、アルトが必死に払っている。「アルト、シルフィ!」 思い出の場所を穢され、我が子を傷つけられた。その光景に、エリアーリアの怒りが改めて燃え上がった。 胸元の魔女の紋様が強く輝く。(許さない。絶対に!) 慈悲深い癒やし手だった女はもういない。ここにいるのは、断罪者としての魔女だ。 開いた扉から、黒い男が歩み出た。地下の闇をそのまま人の形にしたような男だった。「来たか、深緑の森の魔女よ。なんと美しい……!」 ダリウスはくぐもった笑い声を上げた。 欲望にぎらついた目で、緑金の
Last Updated : 2025-11-16 Read more