アレクの戴冠から一年が過ぎた。 王宮の評議の間では、アレクが大臣たちと重要政策について議論をしている。  儀礼的な意味合いが強い玉座の間とは異なる、実務的な部屋だ。  机に広げられた大きな地図を前に、大臣たちが次々と報告を行った。  これまでに多くの議論が交わされて、今日の議題は、先の戦乱で荒廃した北の穀倉地帯の復興についてだった。「陛下、北の復興には莫大な資金が必要です。一時的にでも、商業都市から税を徴収するのが妥当でございましょう」 財務大臣が言う。他の臣下たちは頷いたが、アレクは首を横に振った。「ならぬ。一つの傷を癒すために、別の場所に新たな傷を作るのは愚策だ。各地の商業都市は、前王ガーランドに不満を持つ者が多かった。それを俺が悪法を撤廃すると約束して、助力を取り付けたのだ。ここで必要以上の税を課せば、彼らの心が離れていくだろう」 彼は立ち上がり、地図の前に立った。脳裏には、森でエリアーリアから教わった言葉が響いている。『一つの木だけでなく、森全体を見よ。森の生命は皆、繋がっている』と。「民生大臣。お前の民からの情報網で、北の民が今一番必要としているものは何だ?」「食料と、次の種蒔きのための種籾(たねもみ)ですな。多くの農家が、食うために種籾まで手放している状況です」 元盗賊ギルドの長、今は民生大臣となった彼の言葉に、アレクは頷いた。「よし。王家の備蓄庫を開き、食料と種籾を無償で供与する。さらに帰還兵たちを一時的に雇用して、復興作業に当たらせよ。彼らに正当な賃金を払うことで、金が回り、町の経済も活性化するはずだ」 アレクはさらに続ける。「北の土地は、ガーランドの六年で側妃派の貴族や商人たちの農地の買い叩きが行われた。不当に得た土地、重税のために放棄された農地を一度国有地として没収する」「それは……」 かなりの強硬策である。大臣たちからざわめきの声が上がった。  アレクは改めて北の土地の地図を指し示した。「勘違いするな。私有財産の没収ではない。ガーランドと側妃派の貴族の所有していた土地、並びに放
Terakhir Diperbarui : 2025-11-01 Baca selengkapnya