Lahat ng Kabanata ng 悠久の魔女は王子に恋して一夜を捧げ禁忌の子を宿す: Kabanata 91 - Kabanata 100

132 Kabanata

91

 閉ざされた扉の前で、アレクは立ち尽くしていた。 騎士たちに命じれば、扉を破るのは容易い。しかしそんなことをしても、エリアーリアの心は開かないだろう。 その時、店の入口からアルトとシルフィが顔を出した。 なかなか戻って来ないアレクと母を心配しているのだ。「かあさま、どこ?」 アルトが言う。家の中に母の姿が見えず、不安そうな表情だ。 アレクは子どもたちの前に膝をついて、話しかけた。「エリアーリアは、俺が急に来たので驚いてしまったようだ。奥の部屋に行ってしまってね」「そうなの? ……ねえ、かあさま、出てきてよ。王様が来てるんだよ」 シルフィが扉をトントンと叩く。返事はない。 アレクは想い人の内心を思って、ため息をついた。 本当はここで一度引き下がるべきなのかもしれない。けれど彼は、どうしても彼女と離れたくなかった。◇ 扉の向こうから聞こえてくる双子の声に、エリアーリアは胸が張り裂けそうになる。 彼女は扉に背を預けて座り込んだ。 もっと冷静に、子どもたちのことを含めて話し合うべきだ。理性はそう告げているが、荒れ狂う感情が心をかき乱している。判断ができない。 今ここで扉を開けてしまえば、もう一度アレクの姿を見てしまえば、全てが後戻りできなくなる。 必死に自分を押さえつけることしかできなかった。◇「少し、二人だけにしてくれないか」 アレクは双子にそう頼んだ。「うん、分かった。外で騎士さんと待ってる」 アレクが心配そうに頷くと、シルフィも言った。「王様、かあさまをいじめないでね」「いじめないよ。話をするだけだ。君たちは優しい子だね」 アレクは双子の頭を撫でると、小屋の扉から外へ出るよう促した。 一人になった彼は、改めて扉の前に進み出る。王としてではなく一人の男として、扉の向こうの愛しい人に語りかけた。「エリア
last updateHuling Na-update : 2025-11-06
Magbasa pa

92

 扉の先から聞こえてくるエリアーリアの声は、涙で震えていた。 頑なな拒絶に、アレクはただ言葉を重ねるだけでは足りないと悟った。(迷惑だなんて。俺の気持ちを、どうしたら伝えられるだろうか) 彼は膝をついて、扉に手を重ねる。その先にいるエリアーリアの体温を感じ取るように。「エリアーリア、君は勘違いをしている。迷惑などにはならないし、俺は君を……君たちを手放すつもりはない」 アレクの声から懇願の色が消えた。代わりに滲むのは、意志と覚悟。 乱暴に扉を叩くことも、ましてや壊そうともしない。ただ手を添えて、言葉を続けた。「エリアーリア。君が扉を開けてくれるまで、俺はここを動かない。たとえ夜が明けても、雪が降ろうとも。王の務めを全て放棄してでも、君が話を聞いてくれるまで、この場で待ち続ける」 脅しではない。愛する女性に対する王として、男としての愛の誓いだった。 扉の向こうで、エリアーリアが息を呑む気配がした。「そんなの、許されないわ。あなたは国王。責務を放棄するなんて、どうかしている」「君に恋した瞬間から、俺はどうかしているよ。王になるための戦いは、全て君を思って駆け抜けた。目の前の君を手放せば、俺はもう俺でいられなくなるだろう。君に救われただけではなく、君に生かされたんだ。どうして離れることができようか」 アレクの覚悟を感じ取って、エリアーリアは言葉を失った。 彼女は彼の愛という決して破ることのできない結界に、閉じ込められてしまったのだ。 ◇  秋の夕暮れが、やがて澄んだ星空へと変わっていく。 アレクは宣言通り、エリアーリアが閉ざした扉の前から一歩も動かなかった。「陛下。お体が冷えてしまいます。せめてこれを」 宰相ヨハンが持ってきた旅装のマントを、黙って羽織る。 けれど用意された椅子には目もくれず、地面に直接座り込んで扉に背を預けた。まるで玉座を捨てたような所作だった。 その姿は王ではない。愛する女性を待つ
last updateHuling Na-update : 2025-11-06
Magbasa pa

93:開いた扉

 扉の向こうに、エリアーリアは彼の気配を感じ続けていた。 夜が深まっても、一睡もできない。外の騎士たちが立てる微かな物音、夜風に薬草畑の草花が揺れる音。そして何より扉のすぐ向こうに在る、彼の静かな呼吸。その全てが、彼女の心を責め立てた。(なぜそこまで……。王の務めを本当に放棄する気なの?) アレクの行動は、エリアーリアの最大の懸念である「王としての立場」を、彼自身が否定しているようだった。 彼女は知っている。アレクが王になるまでの戦いの歴史と、王になってからの賢明な治世を。 それらは国の触れ役や旅の吟遊詩人によって歌い上げられ、今や国民の誰もが知るところになっている。 エリアーリアは飾り立てられた英雄譚の中に、アレクの本当の姿を見つけていた。 彼は心から国と民のためを思って行動している。だからこそ、王座を投げ捨てるような行動が信じられなかった。 エリアーリアが七年かけて築き上げた、心の壁。アレクに頼らず、子どもたちを育て上げるという決意が、少しずつ揺らいでいく。◇ 夜が更けて、秋風が冷たく肌を刺す頃。 騎士たちの天幕に預けられていた子どもたちが、そうっと小屋に入って来た。「王様、寒くない? 毛布、使って」 アレクは部屋の隅に置いてあった毛布を持ってきて、アレクの膝にかけた。 シルフィは店の台所に立って、魔法で火をつける。簡単な灯火の効果とはいえ、詠唱もなく自然に魔力を使いこなしていた。 シルフィはかまどにかけられたままになっていた鍋を温めて、カップにスープを注いだ。「これ、どうぞ。かあさまと一緒に作ったスープだよ。飲むと体が温かくなるの」「……ありがとう」 アレクは健気な双子の姿に胸を打たれた。 スープを一口飲めば、あの懐かしい味がする。 長い年月で凍えてしまった心が、溶けていくようだった。「君たちは、本当に優しい子だ」「えへへ」 アレクが照れたように笑って、
last updateHuling Na-update : 2025-11-07
Magbasa pa

94

「守ってあげられなくて、すまなかった」 これからはどうか頼ってほしい。言いかけて、口をつぐむ。 父親らしいことは何一つできなかった。今さらどの面を下げて言うというのか。 双子たちは顔を見合わせて、口々に言った。「守ってくれたよ? 悪い王様をやっつけて、税金を安くして、助かったって町の人が言ってたもん。かあさまの店にも、怖い顔で税金を取り立てに来る人が来なくなった」「かあさまの店に来る人も、前より増えたの。新しい王様になってから、街道が安全になって、旅がしやすくなったからだって」 アレクはカップを握りしめた。 王として成した事々が、こうして認められている。他でもないエリアーリアと彼の子どもたちに。「ありがとう……」 その一言を言うのが、精一杯だった。◇ 扉の向こうで声を聞いていたエリアーリアは、身を切るような思いを感じていた。(アルト、シルフィ。ずっと寂しい思いをさせて、ごめんね。お父さまに会いたかったよね……) 子どもたちが呼びかける声が聞こえてくる。「かあさま! 王様が風邪ひいちゃうよ。おれ、かあさまが悲しい顔をしているのは嫌だ!」「かあさま……もう泣かないって、約束したよね」 シルフィの言葉が、とどめだった。 七年前、友人たちに別れを告げた時、彼女は誓ったのだ。「これで泣くのは最後にするわ」と。(シルフィ。あなたは覚えているの? まだ生まれる前の、お腹の中にいた時のことなのに) エリアーリアが泣けば、子どもたちが悲しむ。そうと気づいて、彼女は心を決めた。 涙をぬぐって、顔を上げる。 窓を見れば、もう東の空は白みかけている。星々の光は青いヴェールに覆われて、夜が終わろうとしていた。 エリアーリアは立ち上がって、扉の閂(かんぬき)を外した。閂を引き抜く重く長い音は、彼女の心の扉をも開いて行くようだった。 扉を内側に開
last updateHuling Na-update : 2025-11-07
Magbasa pa

95:限りある時の中で

 アレクとの対話を決めたエリアーリアは、まずは疲れて眠ってしまった子どもたちを寝室に運び、毛布をかけた。 双子の寝顔にキスを落として、そっと微笑む。 それから暖炉の椅子に座り、アレクにも向かいの椅子を勧めた。 秋の明け方のしんと澄んだ空気に、パチパチと薪のはぜる音が響く。 七年ぶりの二人きりの時間だった。 最初に口を開いたのは、アレクだった。「何から話そうか。この七年は色々なことがありすぎて、何を話せばいいか、迷ってしまうな……」「じゃあ、最初から教えて。私たちの道が分かたれた後、あなたはどうしたのか」「そうだな。あの一夜の後、目覚めた俺は、君がいないと気づいて絶望したよ。あれほど幸福な夜だったのに、朝になれば全て消えているなんて。今思い出しても胸が痛む」 そうして彼は話し始めた。別離の辛さを糧に変えて、歩き始めたこと。最初はヴァレリウス将軍の力を借りて蜂起したが、壊滅的な打撃を受けて敗走し、地下に潜ったこと。 失われた命の重さに負けそうになって、罪悪感に苛まされた日々のこと。「絶望の底にいた俺を最後に支えてくれたのは、エリアーリア、君だった。森での幸せな記憶と、君に恥じない男になるという決意があったおかげで、俺は再び立ち上がることができたんだ」 アレクは目の前のエリアーリアをじっと見つめる。まるで目を離したらまた消えてしまうのではないかと、恐れているように。「潜伏した五年は長かったが、それでも多くの仲間に助けられながら、最後まで戦い抜いた。王家に生まれた者として、国を背負う責任はもちろんある。だが結局のところ、俺の心の底にあるのは、君にもう一度会いたいという気持ちだけだった。兄から玉座を取り戻したのも、君に恥じない男になるための手段にすぎない。だから、エリアーリア」 彼は立ち上がり、エリアーリアの前に跪く。たくましい指で、細い手を取った。「だからどうか、俺の妃になってほしい」 暖炉の炎を映した夏空の瞳は、まっすぐな情熱を宿している。彼女だけを見て、彼女だけを求めている。 七年
last updateHuling Na-update : 2025-11-08
Magbasa pa

96

「……できません。私は同族から追放された禁忌の魔女。還るべき世界を失った、穢れた存在です。あなたの隣には立てません」 それは、彼女なりの最後の愛の形だった。賢王となった彼の輝かしい未来を、自分の存在で汚すわけにはいかない。 アレクはわずかに両目を見開いた。「追放された? まさか、俺と関わりを持ったせいで?」 エリアーリアは答えない。その沈黙こそが答えになっている。 アレクは深い息を吐いた。「何ということだ……。俺の存在が、君にそこまでの負担を強いていたとは。知らなかったでは済まされない」「いいの。あの子たちを産むと決めてから、覚悟はできていたから」 アレクは彼女のたおやかな手を、大きな両手で包み込んだ。 七年前の彼の手と比べて、骨ばって荒れた手だった。どんな言葉よりも彼の軌跡を表している気がして、エリアーリアは目を伏せる。 アレクはそんな彼女から目を離さず、続けた。「君に帰る場所がないのなら、俺が君の新しい世界になる。君が犯した禁忌ごと、君の全てを愛している。君が穢れているというのなら、その穢れごと、俺が愛し抜いてみせる」 アレクの心からの言葉に、エリアーリアの気持ちは強く揺れる。 けれど彼女にはまだ恐れがあった。人ではない存在ゆえの、大きな怖れが。「私は、老いないの」 細い声が、静かな室内に響く。「もう魔女ではなくなったけれど、千年の寿命は変わらない。あなたも、この子たちも、いつか必ず私を置いて逝ってしまう。永遠に近い孤独に、愛しい人を見送る痛みに、私はもう耐えられないかもしれない!」 彼女がまだ人間だった頃、弟を病で失った。 それから百年を生きるうち、両親や親しい人を何人も見送った。全ての別れは辛く、エリアーリアは忘却することで、魔女として未練を断ち切ったのだ。 アレクのことも、双子のことも、忘れられるとは思えない。忘れたくない。 愛が深いほど別離の悲しみも深まる。彼を愛しているからこその、拒絶だった。
last updateHuling Na-update : 2025-11-08
Magbasa pa

97:父と子

 永遠を約束するのではなく、限りある最高の時間を約束する。 人間らしい誠実な言葉に、エリアーリアの最後の心の壁が音を立てて崩れ落ちた。「馬鹿じゃないの。せっかく私が断っているのに。そんなこと言われたら、もう一緒に生きるしかない!」 エリアーリアはアレクの胸に飛び込んだ。顔を埋めて、猫のように頭を擦り付ける。 ぽろぽろと涙があふれ出た。「あなたのせいで、涙が止まらないわ! シルフィにもう泣かないと、約束したばかりなのに!」「あの子たちは眠っている。俺が聞くだけなら、何の問題もない」「本当に、馬鹿な人……」 アレクはエリアーリアを抱きしめた。細い体の鼓動を確かめるように。 二人の空白の七年が、ついに埋められた瞬間だった。 ◇  翌朝のこと。 小屋の扉が、静かにノックされた。エリアーリアが扉を開けると、そこに立っていたのは、豪華な王の装いではなく質素な旅装をまとったアレクだった。彼は王としてではなく、七年前に森で暮らしたただの青年として再び訪れたのだ。 エリアーリアの視線を受けて、彼は少しだけ照れたように微笑んでいる。「おはよう、エリアーリア。今日の俺は王としてではなく、ただのアレクとして来た」「おはよう、アレク。待っていたわ」 小屋の中は、薬草と焼きたてのパンの香ばしい匂いが満ちている。テーブルではアルトとシルフィが少し緊張した面持ちで、母と「王様」を交互に見ていた。(この穏やかな光景こそ、俺が七年間、戦い続けて求めてきたものだ) アレクは胸が熱くなるのを感じた。「さあ、アレクも。あなたも座って」 エリアーリアは、ごく自然な動作で彼の席を用意した。昨夜想いを受け入れたものの、まだ少し恥ずかしさと戸惑いがあった。けれど子どもたちを優しい目で見つめるアレクの姿に、彼女の心は安らぎで満たされていく。 四人にとって、初めての「家族」としての朝食だった。◇
last updateHuling Na-update : 2025-11-09
Magbasa pa

98

「王様が、おとうさま……?」 双子はぽかんとしている。 不思議そうな目で母を見たので、エリアーリアは頷いた。「王様がお父さまになれるかどうか、あなたたちに聞きたいのですって。今日一日を一緒に過ごして、考えてみて?」「よく分かんないけど、いいよ」 アレクが元気よく言った。「王様の髪の毛は、シルフィにそっくりな銀色だもんね。お父さまの資格、あるかも?」「そんなこと言うなら、アレクの目は王様とそっくりだよ。夏のお空の色」 シルフィは少しもじもじしている。アルトは首を傾げた。「そんなに似てるー? シルフィの目は、かあさまとおんなじ色だけどさ?」「ちょっと並んでみましょうか」 エリアーリアが言って、親子は小屋の中で小さな輪を作った。 隣り合った親と子が、「似てる。そっくり。同じ色!」と言い合って笑う。 他愛もないやり取りが、エリアーリアとアレクの心に幸せを広げていく。 二人は目を見交わして、微笑んだ。◇ 小屋の外では、騎士たちの天幕は撤収されていて、いつも通りの風景が広がっていた。 アルトが走っていって、物置から木の剣を取り出した。いつも騎士ごっこのお供をしている、自慢の一品である。 彼は木剣を構えて、挑戦的な眼差しを父に向けた。「王様は、強いの?」「まあ、それなりかな」 アレクがにやりと笑うと、アルトは木の剣を掲げた。「試合しよう! 腕比べだ!」「ふむ。いいぞ」「これ、貸してあげる」 アルトは予備の木剣を持ってきて、アレクに渡した。 父と子は少しの距離を取って、剣を構える。一礼の後、打ち合いを始める。(へえ、これは……!) アルトの子どもとは思えない腕前に、アレクは内心で舌を巻いた。 細い腕から繰り出される一撃は重く、小さい体を活かした動きは素早い。 も
last updateHuling Na-update : 2025-11-09
Magbasa pa

99

「やあっ!」 アルトが深く踏み込んでくる。威力のある突き。 威力があるだけに、隙も生まれる。アレクは息子の猛攻をかいくぐり、相手の手から剣を弾き飛ばした。 剣はくるくると宙を回って、地面に突き刺さる。 アルトは勢い余って尻もちをついた。「アルト!」 シルフィが叫んだ。エリアーリアはただ見守っている。「勝負あり、だな」 木剣を突きつけてみせると、息子は悔しそうに頬を膨らませた。「だが、見事な腕だった。誰に習ったんだ?」 父の言葉に、アルトはぱっと顔を輝かせる。「最初は町の剣術道場。でもすぐ、子ども用の指導じゃつまんなくなってさ。そのあとは独学! かあさまを守るために、強くならなきゃって思って」 誇らしげに胸を張る息子の言葉に、アレクは胸を突かれた。「……そうか。お前は立派な騎士だな。これからはどうか、俺も一緒にエリアーリアを守らせてくれ」 愛情といたわりを込めてアルトの頭を撫でると、彼は照れたように俯いた。「かあさまは、アルトよりずっと強いのにね。男の子は、可笑しいね」 シルフィがそんなことを呟いたので、エリアーリアは内心で噴き出してしまった。「あら、かあさまは嬉しいわよ。アルトもシルフィも、いつも助けてくれるから」「そう?」 シルフィは少し恥ずかしそうに目を逸らして、庭の隅にしおれかけた花を見つけた。 たたたっと駆け寄って、膝を折る。「元気になって」と囁きかけると、添えた手からわずかな魔力が光となって放たれ、花が瑞々しさを取り戻した。「うーん。かあさまみたいに、上手にできないなあ……。ごめんね、お花さん」 その光景を、アレクは驚きをもって眺めていた。小さな効果とはいえ、エリアーリアがかつて森で見せてくれた、生命の魔法によく似ていたからだ。「エリアーリア。シルフィのあの力は、魔女のものではないのか?」 アレクの問いに、エリアーリアは首を横に振った
last updateHuling Na-update : 2025-11-10
Magbasa pa

100

 夕焼けが、小屋と庭とを金色に染めていく。「そろそろ時間だ。もう行かなければ」 アレクが名残惜しそうに言う。 するとすっかり彼に懐いたアルトが、その前に立ちはだかった。「ねえ、王様。あなたは、本当にかあさまを幸せにできるの? もしかあさまを泣かせたら、おれが王様でもやっつけてやる!」 その小さな体に宿る、父である王にさえ臆さない強い意志。 アレクは少し驚いて、それから心からの笑みを浮かべた。 父は息子の前に跪いて、互いによく似た青い瞳でまっすぐに見つめ合った。「泣かせるものか。俺が一生、君の母様を笑顔にしてみせる。王としてではなく、一人の男として、君に約束する」 このやり取りを、エリアーリアは小屋の戸口から黙って見ていた。 母の隣にいたシルフィが、父と兄の元へと駆け出した。両手でおずおずと、二人の手を取る。「かあさま、アルト。この人、本当のことを言っているよ。とても、温かい心をしている」 妹の手を握って、アルトがにかりと笑った。「そっか。シルフィが言うなら、本当だね。じゃあ仕方ない。認めてあげる、『とうさま』」「うん。かあさまをお願いね、『とうさま』」「アルト、シルフィ……!」 アレクが感極まって、双子を両手に抱いた。 息子の小さくも雄々しい誓いと、娘の優しい心遣い。 二人の子供たちの言葉が、エリアーリアの心に残っていた最後の不安を、完全に溶かしていった。 ◇  翌朝、エリアーリアと双子は、七年間暮らした「緑の小屋」を去る準備を始めていた。 アレクと共に王都へ行くのだ。「君を王妃として迎える。アルトとシルフィは、俺の子として正式に王子と王女になる」「わたしが、お姫様……」 シルフィは嬉しそうだ。アレクはそんな彼女を抱き上げた。「そうだよ。アストレア王女の前に、俺の大事なお姫様だ」
last updateHuling Na-update : 2025-11-10
Magbasa pa
PREV
1
...
89101112
...
14
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status