法廷の外側で、イグニスが怒りに体を震わせている。その横ではリプルが涙を流していた。「待ちな、テラ様! 話も聞かずに決めつけるのか! こいつはまだ若いんだ!」「そうですよ! エリアには事情があったはずです!」 イグニスとリプルが叫んだ。岩の壁に駆け寄ろうとするが、見えない力に阻まれて弾き飛ばされる。 イグニスはなおも言い募った。「エリアは深緑と生命の魔女。生命の魔女が、命を助けて何が悪い!」「テラ様、どうかお慈悲を。せめてあの子の話を、聞いてあげてください」 テラは二人の必死の訴えを、表情一つ変えずに聞いていた。「言いたいことは、それだけか?」「な……」 絶句するイグニスに、テラは冷静な眼差しを向ける。「お前たちは、何か勘違いしているようだ。裁くのは私ではない。大いなる自然の掟と魔女の理こそが、我らの寄る辺。還るべき道を失った者は、もはや同胞ではない。ただそれだけの話」 テラが右手を上げると、イグニストリプルの足元の岩が盛り上がった。岩はたちまちのうちに檻に姿を変えて、二人を閉じ込めてしまった。「イグニス、リプル!」 エリアーリアは友人に駆け寄ろうとするが、法廷の柱がせり上がって行く手を阻んだ。「エリアーリアよ。他人の心配をしている場合ではないぞ」 テラは彼女らの抵抗を意にも介さず、朗々と響く声で宣告した。「深緑の魔女、エリアーリア。お前は世界の理を乱し、自ら還るべき道を捨てた。もはや、我らと同じ道を歩む者ではない。よって、魔女集会より永久追放とする。今後、いずれの魔女の領域に足を踏み入れることも、我ら同胞と交わることも、未来永劫許されぬ!」 冷たい宣告が、火口に響き渡る。 最後の言葉が響き終わると同時に、エリアーリアの左の胸元が、灼けるような激しい痛みに襲われた。「ああ……っ!」 エリアーリアは声にならない悲鳴を上げる。 花をかたどった美しい魔女の紋様が、衣服の上からで
Last Updated : 2025-10-06 Read more