「大丈夫よ。もう少しだけ、頑張ってね。必ず、あなたが安心して眠れる場所を見つけるから……」 お腹の子に優しく語りかけて、傾いた扉を押し開ける。崩れかけた小屋の中へ転がり込むようにして入った。 小屋はボロボロで雨漏りもひどかったが、嵐の風の直撃を遮ってくれた。それだけでもかなり体が楽になる。 エリアーリアは壁に寄りかかり、荒い息をついた。(よかった。これでやっと、休める)◇ 嵐はやがて通り過ぎて、雲間から太陽が顔を覗かせた。 エリアーリアは疲れ果てて、床に座り込んでいる。疲労困憊した体は重く、すぐには動けなかった。 ふと目を向けると、床板の隙間から、一輪の小さな青い花が健気に咲いているのが映った。 廃屋の薄暗がりの中、壊れた屋根の隙間から差し込む一筋の光を浴びて、その花だけが輝いて見える。「きれい……」 疲労と不安のピークにあったエリアーリアの心に、一輪の花は希望の光を灯した。 戦争や国の動乱、魔女の掟やエリアーリアの苦難とは無関係に、ただ懸命に生きようとする命の力強さ。その姿は、エリアーリアの心を奮い立たせてくれた。(負けていられないわ。私もこの花のように、強く生きなければ。この子のために) 彼女は花にそっと触れた後、立ち上がった。「お願い、植物たち。力を貸して」 残された魔力を使って、壁に這っていた蔓草を伸ばす。屋根の穴を塞いで、崩れた壁を補強した。 それから風の魔法で室内の塵を払う。濡れた体は温風の魔法で乾かした。 壊れたドアは取り外して、蔓草を何重にも垂らしてみる。 崩れかけたあばら家は、見る間に緑の小屋に姿を変えた。 一通りの作業が終わり、エリアーリアは息を吐いた。これでずいぶん過ごしやすくなる。 次の嵐が来ても、安全に過ごすことができるだろう。 寒い冬が来ても、温かく暮らすことができるだろう。そして春を無事に迎えれば、お腹の子が生まれる時期が近づいてくる。
Terakhir Diperbarui : 2025-10-11 Baca selengkapnya