一つは陽斗。自分のために、全てを投げ打ってくれた人。彼が本当は誰なのか、まだ現実として受け止めきれていない。彼にどう向き合えばいいのか、分からない。 もう一つは蒼也。彼もまた美桜を信じて、救い出してくれた。「僕の隣で」という、あの言葉がまだ耳に残っている。(二人にはちゃんとお返事をしないと。私自身の言葉で) 美桜はスマートフォンを手に取り、連絡先を開いた。そこには『一条陽斗』と『如月蒼也』の名前が、すぐ近くに並んでいる。どちらにかけるべきか、指が画面の上をためらいがちにさまよってしまう。 まさにその時のこと。 画面が切り替わり、着信を告げる。表示された名前は、『如月蒼也』。 美桜の迷いを見透かしたようなタイミングだった。 美桜は一度深く息を吸い、心を決めて、緑色の通話ボタンをスライドさせた。「美桜さん、体調はどうかな」 電話の向こうから聞こえてきたのは、いつもと変わらない声だった。冷静だが優しさと思いやりに満ちた声。 その声を聞くと、美桜は胸が切なくなるのを感じた。(いけない。しっかりとお礼を言わなければ) 美桜はまず、感謝の気持ちを伝える。「蒼也君、本当にありがとう。あなたがいなければ、私は……」 美桜の言葉を、蒼也は穏やかにさえぎった。「礼を言うのは僕の方だよ。君のおかげで、会社の危機管理について見直す良い機会になった」 彼は全てを察したように、優しい声で続ける。「……電話の用件は、それだけだ。僕の誘いの返事は、もう聞かなくても分かっているから」「え?」「一条君と一緒にいる時の君の顔を見ていれば、誰だって分かるさ。僕の出る幕はなかったようだね」 彼の言葉には嫉妬や悔しさではなく、親しい友人のような温かさがあった。美桜は蒼也の優しさに胸を打たれる。 蒼也は最後に、こう告げた。「僕からのオファーは、いつでも有効だ。恋人としてではなく、僕が最も信頼するビジネスパートナーとして
Last Updated : 2025-11-28 Read more