「違います!」 美桜は思わず叫んだ。「それは、罠です! 私は……はめられたんです!」 だが役員は表情一つ変えない。 ドアが開いて、翔と玲奈が入ってきた。二人は証人として、美桜から少し離れたパイプ椅子に座る。 玲奈は俯き、時折ハンカチで目元を押さえている。翔は心底心配だという表情で口を開いた。「我々も、このようなことは報告したくありませんでした。しかし、偶然、高梨がPCの前で不審な動きをしているのを見てしまいまして……。このプロジェクトは会社の最重要案件です。一人のメンバーとして、また営業部の課長として、見過ごすわけにはいかないと判断しました」「翔さんを止めたんです、私! でも、翔さんは『高梨さんを信じたいけど、確認しないと』って……本当に、ごめんなさい、先輩……」 玲奈が嗚咽混じりに言うと、役員の目が一層厳しくなった。「高梨君。目撃者の証言もある。物的証拠も、ログという客観的なデータも揃っている。これでも、罠だと主張するのか?」「……お待ちください」 美桜は一度固く目を閉じた。込み上げる怒りと絶望を喉の奥に押し込む。ここで感情的になれば、相手の思う壺だ。「これは罠です。そして、論理的に考えてください。私がこのプロジェクトの最重要機密を、このような稚拙な方法で盗み出すことに、一体何のメリットがあるというのですか」 彼女の声は低く、震えを必死に抑えていた。 しかしコンプライアンス担当役員は、表情一つ変えずに首を横に振る。「動機については、これから調査する。我々が問題にしているのは、君が『実行した』という、ログと物証によって裏付けられた事実だ」「だから、それは彼らが仕組んだ罠だと……!」 美桜の必死の訴えは、もはや役員たちの耳には届いていなかった。彼らにとってそれは、動かぬ証拠を前にした、見苦しい言い訳としか映らない。状況証拠は、彼女を「犯人」と
Last Updated : 2025-11-18 Read more